効果1億円、コスト620億円
大阪市の試算によるとこうした特別区発足のためのコストは約600億円で、さらに毎年20億円のコストがかかる。毎年1億円のメリットに比して、大幅なマイナスだ。
意外と忘れがちなのが、住所変更に伴う出費だろう。大阪市○○町○○番地だった住所に、××区という文字を入れなければならない。町の住所表示はもちろんだが、一般企業、商店なども、パンフレット、封筒、名刺など、住所が記入されたものはすべて刷り直す必要が出てくる。一部の印刷業者は儲かるかもしれないが、市民にとっては迷惑な話だ。
東京でも23区ができる際に、古くからの町名が失われて混乱が起きた。大阪の人々が自らの手で、特別区の区割りを決めたのであればまだ納得できるかもしれないが、今回、区割りを担当したのは、橋下が選んだ公募区長。市の既得権益と闘うために民間から広く募集するという当初の目的は否定されるものではないが、橋下のもとへ集まってくる人間は、所詮、橋下レベルだった。
公募区長たちの前職は、経営コンサルタント、会社役員、報道記者、電力会社職員、他府県の職員などだが、12年度から採用された18人の公募区長のうち、すでに4人が退職。退職理由もセクハラ、職歴詐称、区の事業を担当する業者との癒着など、あまりにもお粗末だ。
同様に橋下の肝いりで始まった公募校長制度も散々な結果に終わっている。こちらも11人のうちすでに6人が辞めた。辞職理由は保護者へのセクハラ、府職員へのパワハラ。「給料が安いから」と辞めた校長もいた。