無用な摩擦より、よりよい仕事を

多くの人は女性に対し、学校の勉強や試験には強いかもしれないが、「世の中のことはよくわかっていない」「押しがきかない」「本当の馬力がない」「汚れ仕事は任せられない」といったイメージを持ち、男のほうが使いやすいと考えています。

私は共学の高校・大学に進学したので男女の能力の差はない、いい仕事ができさえすればいいのだと単純に考え、いろいろな提案をし、意見も述べてきました。そのために若い頃痛い目に遭ったのだろうと思いますが、今振り返るとそうした環境の中で反発されないよう配慮すべきだったなと反省する点があります。「ああいうときには、もっとあいまいな口のきき方をすればよかった」という思いは山ほどあります。

そうした経験を踏まえると、無用な摩擦を生まずに、よりよい仕事をする知恵も必要だと痛感します。もちろん黙っているのがベストのマナーというわけではありません。20世紀頃までは謙譲の美徳とか、でしゃばる女性は嫌われるとか、笑顔でにっこり、しっとり振る舞えといったように女性は奥ゆかしく振る舞うというのが躾でした。でも、それでは21世紀の社会で通用しません。

だからといって男性のように単純に前へ出ていけばいいということでもありません。女性に対していまだにいろいろな誤解や偏見を持っている人がいることを十分に踏まえて、そちらへの予防的なことを配慮しながら、しっかり成果を出すことを考えなければなりません。女性は働き方が難しいと後ろ向きに考えるのではなく、新しい働き方をつくるのだと前向きに考えましょう。余計な摩擦やトラブルは起こさない予防が一番ですが、ポイントは「何ができるか」です。

私は女性社員が男性社員と同じように仕事をすることは勧めません。男性の無駄な働き方をまねするのではなく、男性では気づくことのできなかった業務上の盲点を発見したり、男性では思いつかないような新商品やサービスを開発したりできるはずなのです。

(構成=吉田茂人 撮影=小倉和徳 写真=Getty Images)
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