――たくさんの情報の中から、正しい答えを探し出すのは容易ではないと思うのですが。

今、どのような変化が起きていて、それがどうやってお金を生み出すかを考えればいいのです。

価格が低く抑えられて落ちこんでいる業界で起こりつつある変化の兆しをつかみ、ポジティブな動きが生じていないか注意深く分析するのです。たとえば今の日本における農業がまさにそうです。日本に限らず、世界各国は食料を生産した量よりも多く消費していますが、貯蔵量は歴史的に低い状態が続いています。農業従事者の平均年齢は米国では58歳、日本や韓国では66歳と高く、世界中で農業従事者が不足しています。その理由は、農業が長く悲惨なビジネスであり続けたからですが、だからといってこの先も同じ状態にあるとは限りません。

肝心なのは変化を起こす「触媒」を探すことです。70年代においても食料はさかんに消費されていましたが、当時はもっと貯蔵量があったので、作物の価格が上がり始めると人々は備蓄を売るので価格が下がりました。そもそも、当時は農業従事者も多かった。しかし備蓄も働き手も少ない現在においては、触媒の性質はまったく異なってきます。

――「変化の触媒」をキャッチしたとき、何を基準にその将来性を見抜き、儲けることができるのでしょう。

政府が何かに多大な投資をしているときは、それによって儲かる人たちが存在することを意味します。たとえば今、中国では大気汚染が深刻で、政府は環境の改善に多額のお金を使っています。だから必ず、このビジネスで儲ける人が出てくるのです。どんな人たちがお金を儲けるのかを見極めることができれば、あなた自身も彼らと関わって利益を享受することができるでしょう。

私はつい最近、ニューヨーク株式市場に上場している中国のエンターテインメント企業・FABユニバーサルの役員に就任しました。検閲が行われている中国でエンターテインメントビジネスに関わるなんて正気の沙汰ではないと、過去50年くらい誰もが思っていたでしょう。しかし北京では12年以来、中国文化を再生させようという動きがあるのです。これまで商標や著作権を保護するという考えは浸透しておらず、海賊版や盗用などが横行していましたが、中国政府はダイナミックな自国文化の再構築を目指し、作家やアーティストたちを保護するために動き出しました。長年野放しにしてきたところに、いよいよメスを入れたのです。まさに歴史的な変化が中国で起ころうとしています。FABは将来、ディズニーのような企業に成長するかもしれない。