ドワンゴ人事部長 野々垣尚氏

弊社(株式会社ドワンゴ)は2015年春入社の新卒採用試験から、1都3県で受験料を集める制度を導入しました。採用が決まった後に、研修費用の一部などを徴収する企業はこれまであったようですが、入り口であるエントリー段階で受験料を取る事例はありませんでした。これが内規に触れるとのことで、リクナビからは撤退しました。

賛否両論が渦巻きましたが、この採用方法はもともと会長の川上量生が数年前から温めていたものです。昨年の夏、川上が突然、「採用試験で受験料を徴収する」と宣言したのです。当初は、その結論の部分だけしか聞かなかったので、会長の真意が理解できず現場は大変混乱しました。

「学生が集まらないのでは?」

そんな反対意見もありました。ですが、「ただカネを取る」のではなく、<今の若者と企業とのつながり、新卒採用の方法は健全ではないのではないか。世の中の就活スタイルを変えたい>という会長のメッセージが、社内で次第に浸透していきました。つまり、1人の受験生が安易に150社ほどエントリーすることがある現状に、一石を投じる狙いがあったのです。

結果、今年の受験生は昨年よりも6割強減りました。それは批判される部分もあるでしょう。しかしそれ以上に、学生とわが社のマッチングの精度は格段に上がりました。1万~3万人が応募してきたこれまでは、志望動機が希薄な学生も少なくなかった。ですが今年は、資質のある学生、優秀な人材に多く出会いました。応募者は大幅減なのに欲しい学生が増え、採用数は逆に増えたほどです。目的意識を持った精鋭が集まることで、学生と私たちはしっかりと向き合えるようになり、お互いが真剣勝負を挑むような採用試験が実現したのです。これは「受験料制度」の大きな収穫で、大成功であったと自負しています。

今後、各社の採用はもっと多様化していくべきでしょう。就活も人と人との縁。弊社はこれからもそのスタンスを崩しません。

(青柳雄介=構成 村上庄吾=撮影)
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