人事部の採用担当は「いい学生が採れない」と嘆く。社会構造の変化は企業に多彩な人材、能力、スキルを求めている。今、企業で昇進できる人材の条件を人事部が語りつくす。

【IT業績が回復しつつあるといっても採用数は増やしていない。2011年度採用予定数は06~07年の半分以下だ。12年度はもう少し増やしたいと思うが、将来を考えると大量採用時代はもう来ないだろうね。

不動産うちも11年度200人弱。07年までは毎年500人を超えていたが、国内市場が収縮するなかではもうそんなに採れない。景気が悪化し、業績が落ちると当然賃下げや賞与カットなどで負担を強いられるのは社員だ。もう過去の大量採用はすべきではない。少なくとも今後10年の間に大量採用すること自体イメージできないね。

化学うちもせいぜい100人弱。中国などアジアの需要が旺盛だといっても、アラブ諸国との競争も激しく今後どうなるかわからないから、増やすことは考えていない。採用数が少なく買い手市場だから採用は楽だろうといわれるがそんなことはない。学生の二極化が進み、ほしい学生の取り合いが激しくなっている。

流通同感だ。買い手市場という感じはまったくない。応募学生は多くても、ほしい学生に当たるヒット率はすごく落ちている。おとなしくて真面目で、言われたことはやるだろうが、自ら率先して何か企画しようとするような雰囲気を感じさせる学生は少ない。

商社年々学生の質が下がっているような気がする。採用予定数は意識せずに、これはと思う学生がいるかどうかで合否を決めている。最終的には当初考えていたよりも内定者数が少なくなっている。

ITうちも採用予定数を割ってもいいという考えで臨んでいる。社員の人口構成上、採用目標はあるが、下駄を履かせてまで採るつもりはない。予定が100人なら、半分の50人でもいいと思う。

サービス正直言って、本当に我々がほしいと思う学生はどこの大学にもいないんじゃないか。以前は大学のイベントの説明会に呼ばれて行くと、結構いい感じの学生はいた。しかし、一昨年、昨年、今年もいくつかの大学に呼ばれて行ったが、まったくと言っていいほどそういう学生にお目にかかったことがないんだ。

IT今年の学生は全体的に見て“小粒”という印象だな。履歴書を見ると、一流大学ないしは大学院出身のピカピカの学生やTOEIC800点以上とか、こんな論文書きました、こんな活動をしていましたと一見、ものすごく優秀そうだが、実際に会うとたいしたことがない。粉飾優秀学生が多いね(笑)。

流通小粒という感じはわかる。どんなに優秀な大学でも一緒だね。人気企業ほど、偏差値は高いが小粒な学生が来ているような気がする。どの学生も手応えがない。逆に人気企業ということで、三流大学の学生は最初から諦めて、磨けば光る原石のような学生は応募しないということもあるかもしれない。

不動産我々企業側の責任もあるかもしれないが、今はエントリーシートの書き方とか就職指導を丁寧に行う就職予備校的大学が多いし、就職活動サークルなんていうのもある。こういうことをやれば就職に有利だとか、結局、そういう情報に踊らされて小手先の就職術を懸命にやっている。あまりにもゆきすぎている。

商社確かに偏差値が高い上位校ほど小粒の学生が多い。なぜなら頭がいいから、就職の知識やスキルを習得するのに長けている。バカなやつはそこまで完璧にこなせないし、化けの皮を剥がしやすい。頭のいいやつは、聞かれたことに対する答えを用意し、質問をかわす訓練を積んでいるから化けの皮を剥がすのが難しい。

サービス】役員面接でも、僕としてはこいつ、うまくかわしたなと思っていても、ころっと騙される役員もいる(笑)。後で役員に落としたほうがいいですよ、と言っても「おもしろそうだからいいじゃないか」と、内定を取る学生もいる。

※すべて雑誌掲載当時