騙されやすいのは疑い深い頭の良い人
ユニークなのが和田教授の勧める対処法。常日頃から「人を見たら泥棒と思え」というより「渡る世間に鬼はなし」と考える人のほうが、他人に騙されにくいという逆転の発想ともいうべきものだ。
「他人を泥棒と見る人は、騙されるまでの防御の壁は厚いかもしれないが、いったん入られるとズルズルといってしまう。ところが、基本的に相手を疑ってかからない人のほうが、怪しい変化に気づきやすい。だから、人との交際範囲は広くしておいて、何か不審なそぶりを感じたら警戒すればいい」
厳しいのは、黒川氏の見解。騙されない秘訣などはないし、狙われたら絶対に逃れられないと断言する。とりわけ一人暮らしの老人は、体が弱ると、精神ももろくなり、強烈な犯意を持った女性には、とても太刀打ちできないというのだ。
「ただし、公正証書を書かせようとしたなら断固とした態度を取るべきだ。その意味でも、息子や娘などの家族とは同居は難しいにしても、近くにはいたほうがいい。そうすれば、父親の変化にも気づいてくれる可能性は高くなると思う」
とはいえ、角田元被告のように、恐怖により、家族全体を異常な心理状態に追い込み、マインドコントロールする者もいる。今回取り上げた事件は氷山の一角でしかない。しかも、一連の報道が事件への警鐘を鳴らすと同時に、犯罪予備軍への認知に働いてしまった可能性も否定できない。ありふれた言い方だが、自分の身は自分で守っていくしかないのだ。(文中敬称略)
(共同通信社、AFLO=写真)