日本自動車工業会会長(ホンダ会長)池 史彦(いけ・ふみひこ)
1952年生まれ。上智大卒。82年本田技研工業入社。2013年4月同社代表取締役会長に就任。14年5月日本自動車工業会会長に就任。
「超円高」に苦しんでいた自動車業界だが、アベノミクスによる円安の恩恵で、大手メーカー各社は今期も過去最高の好決算の見込み。
だが、「昨年は持続的成長への試練に直面した年だった。今年も軽自動車の増税などを控え相当厳しいと思う」と、憮然とした表情を浮かべるのは日本自動車工業会(自工会)の池史彦会長。2014年の国内新車販売は消費増税前の「駆け込み」特需で台数こそ3年連続で500万台を上回ったが、4月以降はその反動減から苦戦。「夏頃には回復すると思っていたが、まったく戻らなかった」と見通しの甘さを自戒する。
自動車メーカー14社で構成する自工会では、トヨタ、ホンダ、日産から2年ごとの輪番で会長職に就く。ホンダ出身の池会長は増税直後の昨年5月の就任だが、円高や大震災など“6重苦”のトヨタや日産の会長に比べれば、円安の追い風の中での発進だった。しかし、想定外の国内販売の低迷に加え、米国で火の手が上がり、国内にも飛び火したタカタ製エアバッグの欠陥問題が追い打ちに。お膝元のホンダでも度重なるリコールの対応に追われて業界全体まで手が届かないとみえて声を弱める。
一般的に業界団体の会長は実質的な権限や責任を伴わない“名誉職”だが、自動車業界は就業人口が500万人を超えるなど裾野が広く「日本経済のけん引役」と期待も大きい。春闘での賃上げや国内生産への回帰など課題山積の中、内憂外患の重荷を背負いながら“業界の顔役”としての真価が問われる。
(写真=時事通信フォト)