100均の「お薬カレンダー」で会話する

お薬カレンダー

私は父の介護で、それらの多くを利用しましたし、知り合った介護サービスの専門家たちからも、色々と便利な製品があることを知りました。ところが、つい最近までその存在を知らないでいたものがありました。介護現場の現状を聞いているケアマネージャーのFさんの話に出てきた「お薬カレンダー」です。

要介護者はなんらかの病気を患っていたり体の不調を抱えたりしており、複数の薬を服用しているものです。我々でも医者から処方された薬を飲み忘れることはよくあるわけで、要介護のお年寄りが毎回きちんと服用するのは難しい。その問題をなくすために服用のタイミングごとに分けられたポケットに飲む薬を入れるようにしたものです。

ベッドの横の壁に架けられるタイプが多いですが、テーブルに置くケースになっているものもあります。デザインはさまざまですが、タテに月曜から日曜まで7枠、ヨコに「あさ」、「ひる」、「よる」、「ねる前」の4枠に分けられ計28個のポケットがついているものが多いようです。介護現場では「お薬カレンダー」と呼んでいるそうですが、メーカーによっては「服用カレンダー」、「お薬ポケット」など名称はさまざまです。

そもそもお薬カレンダーが必要とされるようになったのは、独居老人や、家族がいても事情があってつきっきりでいられない要介護者が、忘れたり間違えたりすることなく薬を服用してもらえるようにするためだったそうです。

服用の判断ができるのは、本人か親族、もしくは訪問サービス事業者では訪問看護師だけです。本人がしっかりしていれば自分でお薬カレンダーのポケットに薬を入れることもできますが、それが覚束ない場合は週に1度、家族や訪問看護師が薬をポケットに準備しておく。そうすれば、ひとりでいても服用できるというわけです。

しかしFさんによれば、見守る家族がいても、お薬カレンダーを使う価値はあるといいます。なぜなら、認知症の進行を抑える効果が期待できるからだそうです。服用のタイミングに飲むための水を持って行き、薬は本人にポケットから取り出してもらう。それを家族は見守るんだそうです。

お薬カレンダーのスタートは月曜の朝。最上段左端にあるポケットから取り出していって、右に進んでいき、翌日はその下段の火曜日朝に進む。薬を取り出すたびに「今は火曜日の昼か」といった具合に今を確認することになります。

認知症の人は曜日を忘れたり、1週間のサイクルがわからなくなったりします。ひどくなると今が朝なのか夜なのかもわからなくなるそうです。お薬カレンダーから薬を取り出すことで「今がいつなのか」を知り、日々の感覚を取り戻すきっかけになるといいます。ちょっとしたことですが、自分の頭を使って今を受け止め、思いを巡らせたりすることは大事なんだそうです。