「王者復活」への険しい道のり

磯崎功典氏

2014年の課税済み出荷量が10年連続で前年割れし、長期低落傾向から抜け出せない国内ビール系飲料市場で不振が際立つキリンホールディングス(HD)が、5年ぶりに社長交代に踏み切る。3月末にHDの三宅占二社長が代表権のない会長に退き、後任に国内飲料事業を統括する中間持ち株会社「キリン」と傘下の事業会社キリンビールの社長をそれぞれ兼務してきた磯崎功典氏が昇格する。

これに先立ち、1月1日付でキリンビールマーケティングの布施孝之社長を、キリンビール社長に充てた。トップ人事の刷新を機に反転攻勢に打って出る狙いとみられ、磯崎氏は「キリンの復活はここ数年にかかっている」と、退路を断った覚悟でかつての王者復活に賭ける。

しかし、中核のビール系飲料事業の不振は深刻だ。14年の国内シェアは33.2%と前年から1.6ポイント落とした。38.2%と逆に0.6ポイント伸ばした首位のアサヒビールとの差は開くばかりで、5年連続で後塵を拝した。第3位以下のサントリービール、サッポロビールもシェアを伸ばし、キリンの一人負けが鮮明になった。

さらに昨年は、株式時価総額でアサヒグループホールディングスに逆転を許し、05年に経営統合交渉に入りながら破談に終わったサントリーホールディングにも、14年12月期の通期売上高で酒類業界首位の座を明け渡す見込みだ。その体たらくに、かつて国内ビール市場で5割を超える圧倒的シェアを誇った“ガリバー”の面影はない。さらに、11年に3000億円(当時)を投じて買収したブラジルの大手ビールメーカー、スキンカリオール(現ブラジルキリン)は苦戦が続き、積極的に展開した海外M&A(企業の合併・買収)は収穫期にほど遠く、王者復活への道のりは険しい。