普通の健康診断ではわからない病気の手前の“未病”段階での体の異常を見つけ出し、栄養バランスを整え直すことで、120歳長寿も夢ではない!? 驚異の検査と治療法を紹介する。

通常の7倍の血液検査項目

ビジネスパーソンが受けた健康診断の結果通知書に記載されている基準値、すなわち検査値が正常であることを示す範囲は非常に曖昧だ。オーソモレキュラー療法(http://president.jp/articles/-/14111)の立場から年間1万人近い患者の血液検査のデータを細かく分析している新宿溝口クリニックの溝口院長にいわせると、その診断基準にもはっきりしたエビデンス(医学的根拠)があるわけではなく、たとえ検査値が診断基準で安全圏内だったとしても、ただちに健康が保証されるわけではないのだという。

そうであるのなら、健康診断の検査値をどう評価すればいいのか。溝口院長は次のような見解を示す。

「あくまでも目安にすぎません。正常とされる範囲が広すぎて検査値が基準値に収まっていても、それが理想的なものか、要注意の状態を示すものかわからないからです。ただし、基準値をオーバーしている場合は、すでに病気である可能性が高い。一般の健康診断は今すぐ病気の治療が必要なのかどうか、ふるいにかけるものだと考えたほうがいいでしょう」

一方、オーソモレキュラーでの検査は他の健康診断とは目的が異なる。「体の異常を病気の手前の状態、いわゆる“未病”の段階で体の異常を見つけ出すことが目的なのです」と溝口院長はいう。血液検査が基本だが、その検査項目は他の健康診断の6~7倍、人によっては10倍以上と多岐にわたるそうだ。

たとえば、ナトリウムやカリウム、マグネシウム、亜鉛、鉄といった血中のミネラルの濃度も調べて、体内の栄養状態をきめ細かく把握する。さらに、生活習慣や自覚症状などの問診も行って、総合的な診断を下す。具体的に異常が見つかった場合には食事療法やサプリメントの摂取で、どの栄養をどのくらい、どのように補充していくのか、治療内容を決める。そして、初診時から3カ月後、6カ月後といった具合に、定期的に再検査をして治療効果を評価し、治療内容の変更を適宜行っていく。

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CASE1:うつ傾向で肥満の40代男性。4カ月でインスリン抵抗性が正常に!

最近、中高年のビジネスパーソンには、メタボ、不眠、花粉症といった、体の不調を訴える人が増えているが、オーソモレキュラー療法によって、そうした不調が目ざましく改善した例を紹介しよう。

うつ傾向があり肥満の40代の男性は動悸やめまいで仕事が手につかず、他の病院で処方された薬をいくら飲んでも症状が改善せずに悩んでいた。そこで新宿溝口クリニックで検査を受けると、明らかに中性脂肪が異常に多く、肝機能も低下し、インスリンが効かない「インスリン抵抗性が強い」ことまで示していた(表を参照)。

溝口院長は炭水化物や甘いものを制限する糖質制限を行うとともに、タンパク質やビタミンB群などをサプリメントで補充していく治療を行った。その結果、4カ月後には体重が11キログラムも減った。さらに、22カ月後には、中性脂肪が大幅に減少、インスリン抵抗性も著しく改善し、初診時に9種類も服用していた薬をすべて手放すことができた。ちなみに低血糖の場合も、脳も体も働かず、うつ状態になりやすくなるので要注意だ。