自社の商品が展示してある未来工業本社4階。岸玄二氏は、アイデアが煮詰まったときにここに来るという。

そんな岸氏の生活と働き方を可能にしているのは未来工業の方針である。残業禁止、年間休日140日、年末年始20連休など“ホワイト企業”として知られる。同時に、製造業で営業利益率14.6%と高い収益性を誇る。

「会社が利益を生むために、私たちは労働時間からアプローチしました。同じ値段、商品だったらブランド力のある大手に顧客は流れる。他の会社にはない付加価値を持った商品で勝負するには社員を大切にし、社員には意欲的に会社での勤務時間を過ごしてもらう必要があります。しかし、中小企業なので大企業並みの給料は払えない。じゃあ労働時間でいこうとなったのです」(総務部総務課 阪本誠課長)

他に類を見ない水準の休日数や労働時間の短さで「未来工業で働いてよかった」「これからも働き続けたい」と社員に感動してもらい、いい商品を考えてつくってもらえば、顧客も感動し、利益も出るという考え方である。

実際、岸氏はこう語っている。

「テコンドーを続けたくて未来工業に入社したのですが、とても自分のライフスタイルに合っていて、もう他の会社では働けません」

長時間労働はかねてより日本の働き方の大問題であり続けているが、慶應義塾大学の鶴光太郎教授は「効率的に働くと労働者が得をするやり方の導入が大事」と指摘する。この観点からすると、今回取り上げた3社はいずれも社員の満足を満たすか向上させており、それが労働時間削減の大きな要因になっているのであろう。