「終活」ブームが後押し? 人生の締めくくりは「子の結婚」
参加者に直接聞いてみた。
「『お母さん、行ってきて!』と娘に頼まれて(笑)。うちの子は結婚する気がないわけではないのにいまだ独身。出会いのチャンスは欲しいけど、結婚相談所に登録するには抵抗がある。とりあえず母親が見てよさそうなら会ってもいい、それで結婚できればなおいいって感じらしいです」(母親・初・娘30代前半)
「うちの子は何度か婚活イベントに行っていやになったクチ。ヘンな人もいるんですって。下手に自分がそういう場所に参加するより、親がいい人を探してくるほうが怖くないし、安心だといっていました」(母親・再・娘30代前半)
「相手の親がどんな人か知らずに異性と付き合うのはじつは冒険。結婚の挨拶に行って『えっ!?』と思ってからでは遅い。親同士が知り合いで、お互いの家庭環境がわかっているほうがトラブルも少ないだろうというのがうちの息子の意見。私たちの今日の参加ももちろん了解しています」(両親・再・息子40代前半)
結婚とは誰のものなのか――。そんな疑念が頭をもたげたとき、ひとつの吉報が、ある参加者からこっそりと告げられた。今年7月に初めて両親で長男と次男の代理お見合いをしたところ、次男のほうの結婚が早くも決まった、今日は長男のためにまたふたりで参加しているのだという。
「次男は来年の6月に式を挙げます。先日、相手の女性が初めてわが家に来たんですが、その挨拶が『はじめまして』ではなく『お久しぶりです』なんです、思わず笑ってしまいました(笑)」(両親・再・息子30代前半)
きちんとした身なりに品のいい話し方。幸せそうな笑顔。この両親を見ていると何かしら「家族の色」のようなものを感じる。この両親と息子たちはきっと仲がいいのだろうと想像する。おそらく次男の婚約者一家はその“色”にうまく合ったのだろう。そして、長男の結婚もそう長くは待たずに決まるのではないか。
そんな気持ちで話をきいていると前出の脇坂氏がぼそっと言った。
「結婚は、自分の命をつないでくれたご先祖への感謝とその恩返しなんです」
ああ、そうか。つまり、これは親たちの「終活」、人生の終焉に向けた準備なのだ。自分たちが消えてもなお残るだろう命の行く先をその目で確かめたいのだ。命のバトンがどこかで受け継がれるのを見届けたいのだ。
もちろん、こんなのは親のエゴだ、子離れ親離れができていないだけだ、と受け取る向きもあるだろう。しかし、だ。そこにはこの世に生き、やがては死んでいく人間としての悲しくてせつない願いが存在している。
子のためでもあるが、自分のためでもある。いわば、「自分事」としての代理見合い。わが子の結婚相手を探そうと今日も一生懸命に会場を動き回る親たちは、心安らかに天国へいくための手続きをしているようにも感じられるのだ。