多様性を確保してくれる「廃人」
【藤村】まだ規模が小さいときからでも多様性は持っていたほうがよいと考えていて、それぞれの個人がどんなことにこだわっているかを重視しています。社内では「廃人度」といっていますが(笑)。
【堅田】「廃人度はどうか?」ということをよく聞かれます。それが仕事であってもなくてもよいのですが、「これを突き詰めたい」と思っているものがあるかどうか。
【藤村】たとえばいま、アメリカに在住している日本人スタッフにアートが専門のメンバーがいます。彼はアート分野のメディアを運営していて広い人脈を持っており、そこから人を引っ張ってきたりしてくれています。また、現在はどこからどんな競合が現れてくるかわからない時代なので、一つのことしか考えていない、一つのコンペティターにしか関心を持っていない状態になると非常にリスクが高まります。多様性は採用のなかでも重要な価値として取り入れています。
――動画に関する方針について、どうお考えになっていますか。
【藤村】動画はかなり重要な、非常にインパクトのある領域だと考えています。そもそもスマートデバイスの世界は、テキストはもちろん画像、動画、音声といったものが融合される場所です。従来のメディアは新聞、放送といった具合にタテ割りの構造で成熟化してきた歴史が長いのですが、スマートデバイスはそういうものをいったんぐちゃぐちゃにして共通化してしまうファクターを持っています。
自分のポケットのなかに新聞もテレビもラジオも入るようになってきたとき、ユーザーにとって最高の体験はタテ割りのなかには起きません。好きなものが融合し、好きなときに好きな文脈で必要な情報に出会える経験をもう消費者は手に入れています。そこから進展してどんな世界がやってくるかはまだわかりませんが、たとえば読むニュースと動画で見るニュースが共通のものになっていくのは、大きな最初の一歩かもしれません。