全国の熱心な100人の教員が浮かび上がった

次の巨大な波はネットワークインフラ構築だった。94年に国の補正予算で、全国100の学校に専用回線を引こうという計画が持ち上がった。大久保社長も、このときの熱気はすごかったという。全国をいくつかのブロックに分けて、敷設工事の入札が行われ、内田洋行は北陸、東海地区を任されることになった。

「100カ所のモデル校に100人の熱心な教員がいました。彼らは『これで、いままで閉ざされた教室にいた子供たちが、外部とつながることができる』と燃えたのです。けれども、後のインターネット接続にしてもそうですが、ハードウェアやインフラを整備しただけではだめでした。彼らの努力が学習カリキュラムに組み込まれることはありませんでした。その意味では、後のインターネット接続も同じです。『教育の現場を変えられる。子供の発想を変えられる』という思いも結実しなかったのです。」(大久保社長)

そしていま、ICT活用の気運がこれまでにないほど高まり、教育現場を変えようとしている。内田洋行では、2013年7月から筑波大学附属小学校と協同で、ICTを有効活用する教育事例の開発を目的とした実証研究を開始した。同校に“未来の教室”を再現し、児童には1人1台のタブレットが配られ、教員が端末に課題を配信する。彼らはそれをグループやペアになって考えを述べ、画面を見せ合って意見を交換していく。それをより効果的にするのが、複数の投影スクリーンにほかならない。

しかも、この実験教室で児童たちが使うのは内田洋行が販売する可動式のデスクチェア。これなら、どこへでも簡単に移動できる。グループなら数人で車座を作ればいいし、ペアなら向かい合えばいい。こうしたところにも、同社のノウハウが生かされている。いってみれば、オフィス家具と教育システムの2つの事業が、ここでは見事に融合しているのだ。

大久保社長は「筑波大附属小では、必ずしも1人1台にこだわってはいません。2人で1台といった風景もけっこう多い。その様子を先生が教室内を回りながら観察し、随時スクリーンを使って説明しています。確かに、最初は機材に振り回されました。しかし、すぐに落ち着いて、いまでは道具として使いこなしている。まだまだ多様なやり方が出てくるはずです。」と見ている。