噛む行為は満腹感を誘発する
昆布は数ある北海道名産品のうちのひとつだが、とりわけ私は酢昆布が大好物で、道内の空港みやげもの売り場や市場などで眼にとまるとつい、買ってしまう。
酢昆布には甘味料が使用してあり、ステビア、甘草は問題ないものの、砂糖、蜂蜜などが使ってあるとカロリーが跳ね上がるので、ダイエット中には控えなくてはならない。
昆布そのものには熱量などなさそうであるが、意外に、ある。乾燥昆布100gにつき、140kcal前後ある。ただし、乾燥昆布100gというのは、けっこうな量で、これに噛みついて、もぐもぐやっていたら、朝から晩までかかりそうなくらいだ。
減量中、私は昆布を長さ5cm、幅5mmくらいに料理鋏で切断したのを「おやつ」にすることがある。口に含んでふやかし、ガムのように噛むわけだが、10gすなわち14kcalも食べないうちに、満腹感というか、もういいや、と食欲がたち消えているのに気づく。
噛む行為は、摂食中枢にはたらきかけ、満腹感を誘発するそうだが、ガムの場合、さほどでもなく、味がしなくなると追加したくなる。それが昆布だとギブアップしてしまうのは、海藻特有の磯臭さも関係しているだろう。
竹鶴政孝は幼い時分に階段だか梯子から転落して鼻をしたたかに打撲し、以降、嗅覚が人並み外れて良くなり、発酵の度合いも匂いで判別できた、というような逸話を読んだ気がする。ウィスキーのブレンダーにはずば抜けた嗅覚が求められるそうだが、災い転じて福、瓢箪から駒、何が幸運をもたらすかわからない。
痛風の発作も、身体が警告を発しているととらえれば、痛くも痒くもない糖尿や癌のようにさしたるサインもなく、いきなり深刻な事態に陥ってしまう病よりは、まだマシなのかもしれない。が、日々、酒精の甘い誘惑と旺盛な食欲と格闘しなければならず、身から出たサビとはいえ厳しい仕打ちではある。