2014年3月期、2年連続の巨額赤字からV字回復を果たしたシャープ。しかしその黒字転換も、大型液晶パネル工場の売却とリストラや給与カットによる固定費削減の影響が大きい。真の再生への道すじは見えてきたのか――正念場の2年目を迎えた高橋社長に、ロングインタビューを敢行した。

※第1回はこちら(http://president.jp/articles/-/13587)

「スマホ」から絶対に撤退しない理由とは

――チャレンジする文化を植えつけるために必要なことはなんでしょうか。

【高橋】なぜこの分野に挑戦するのか、ということを社員にしっかりと理解をしてもらい、それに対して、社長が責任を持つことが大切です。成長分野であれば、挑戦するということは理解しやすい。しかし、状況が決して良くない領域において、挑戦するマインドをどう維持するか。やはりその部分は、社長がしっかりと説明し、責任を持たなくてはならない。

たとえば、私が社長に就任した前後に、同業他社が相次いでスマートフォン事業からの縮小・撤退を明らかにしました。するとメディアからは、「シャープはいつスマホをやめるのか」という質問が飛んできた。そのとき私は、「スマホは絶対にやめない」と宣言しました。

シャープは13年度の携帯電話事業を、5月に年間680万台と計画を発表したのに対し、8月の第14半期決算では551万台に見込みを修正したところでしたし、他社は相次いで撤退を発表している。しかも、海外スマホメーカーが国内市場を席巻し、厳しい戦いを余儀なくされている。

そんな状況下で、なぜその市場に挑戦するのか。それには意味があります。正直なことを言うと、重要なのはスマホそのものではなく、通信技術なのです。これからのシャープを考えると、通信技術を抜きには語れない。通信技術は、スマホのみならず、白物家電や自動車、ロボットの世界でも非常に重要な技術になってきます。通信技術を活用することで、様々なものと連携し、ビジネスの拡大が期待できます。だからこそシャープは、スマホを切り口にした通信事業を、中核事業のひとつと位置づけているのです。スマホは絶対やめない。絶対に手放さない。これが私の思いです。そして、これは事業本部長が決めることではなく、私が決めることなのです。この思いをしっかりと伝えないと、「あの社長、気が狂ってるのか」ということになる(笑)。

こうしたことはたくさんあります。よく聞かれるのは、「液晶をいつやめるのか」ということ。これも絶対にやめない。ディスプレイは絶対に必要とされる。そのひとつとして液晶がある。これからはMEMS-IGZOディスプレイもありますし、有機ELも研究は続けています。そのなかで液晶が挑戦していく領域はまだまだあります。