2003年春の発売以来、資産運用の手段としてすっかり定着した感のある「個人向け国債」。銀行や郵便局で1万円から手軽に買えて、金利は銀行預金よりも有利な水準である。国債は“日本政府の保証付き”が、安全性を重視する個人にとって、大きなアピールポイントになる。一定期間が過ぎれば、国が買い取ってくれる中途換金制度も魅力的だ。

個人向け国債には2つの種類がある。期間10年で半年ごとに金利が変わる変動金利の「変動10」と、期間5年で発行時の金利が満期まで続く、固定金利の「固定5」だ。いずれも発行は1月、4月、7月、10月の年4回で、プレジデント誌発売時点では、10月発行分の募集が行われているところだ。

今回の金利水準は、「変動10」が年0.53%、「固定5」は年0.60%と、実勢金利の下落傾向を受けていずれも前回よりダウンしている。とはいえ、大手都銀の定期預金金利は10年もので年0.5%、5年もので年0.3%程度だから、定期預金より多少は有利だ(いずれも税引き前。定期預金金利は300万円未満で、9月2日現在)。

発行時点だけで見れば「固定5」の金利が高く、一見、有利な商品に見える。だが今後、もし実勢金利が上昇するとすれば、それに連動して「変動10」の金利のほうが高くなるかもしれない。結局、どちらを選ぶかは、今後の経済がどう動くと考えるかにかかってくる。

金融危機の克服を目指し世界各国が力を入れた財政政策が息切れし、今後、世界経済が二番底に向けて沈没していく――という悲観的なシナリオに賛同するなら、今後の金利低下を想定して現在の金利を確保するため、「固定5」を選ぶべきだ。

逆に、現在の金利水準は実体経済に対して低すぎ、2~3年後には緩やかに上昇を始めるはず――と楽観的に思うなら、「変動10」を購入して金利上昇のメリットを得ることを考えればよい。