■検証!そのとき私はどう対処したか
定期保険は割安な「非喫煙」型が人気。ただし、条件は厳格

「これからは予定利率の高い“お宝保険”を活用して、生命保険の掛け金を引き下げましょう」

FPの汀光一さんは50歳のサラリーマンA氏にこう提案した。A氏は民間企業につとめ、妻は専業主婦である。一人息子は1年前に大学を卒業し社会人になった。

汀さんは国内の大手生保を経て独立系FPに転じた保険のプロ。前ページのとおり、50代サラリーマンには、生保の掛け金負担を減らして貯蓄を増やすようアドバイスしている。

だが、1996年4月1日以前に契約した生命保険は、予定利率が3.75%以上(93年4月1日以前なら5.5%)という契約者にとってきわめて有利な条件にある。これを俗にお宝保険と呼び、解約や見直しは避けたほうがよいといわれている。50代サラリーマンの多くは、このお宝保険を保有している。

お宝なのに、見直していいのだろうか?

「ふつうサラリーマンが加入しているのは『定期付終身保険』です。このうち“お宝”といえるのは終身部分のみ。ですから終身部分を残して定期部分を見直します」(汀さん)

「お宝保険」を活用して保険料を下げるには?
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「お宝保険」を活用して保険料を下げるには?

A氏の生命保険は、保障額4500万円のうち終身部分は500万円、残り4000万円が定期部分だった(図を参照)。

定期保険には、満期まで掛け金が一定の「全期型」と10~15年ごとに更新し掛け金が増える「更新型」とがある。全期型の場合は、若いころに高負担となり50代では負担が軽くなるので途中で解約すると損になる場合があるが、A氏の保険は更新型なので、この定期部分を2000万円に変更することにした。

汀さんによれば、見直しの方向性は「アリコジャパンの『定期保険(非喫煙優良体料率)』や、損保ジャパンDIY生命の『1年組み立て保険』、ソニー生命の『逓減定期保険(喫煙リスク区分型)』などの割安な定期保険をとことん活用すること」である。

つまり従来の定期保険4000万円を減額し(または更新せず)、半額の2000万円だけコストパフォーマンスに優れた定期保険に掛け替えるということだ。

ただし、アリコの「定期保険(非喫煙優良体料率)」を例にとれば、掛け金は安いが「過去1年以内に喫煙していない」「両親のいずれかが60歳以前に三大疾病で亡くなっていない」という厳しい条件をクリアしなければならない。さいわいA氏は、これらの条件を満たしていたため、定期部分を非喫煙優良体料率で契約することができた。

ところで、汀さんに家計の見直しを依頼する50代夫婦のなかには、「生命保険は不要ですよ」といいたくなるケースもあるという。

「お2人とも公立学校の教員で、それぞれ500万円を超える貯蓄を持ち、さらに高額の生命保険にも加入しているご夫婦がいました。むろん引退すれば共済年金がもらえます。生保はゼロにし、むしろ貯蓄を増やすべきだとアドバイスしました」

老親にのしかかる「働かない息子」という最悪のリスク

もっとも、理想どおりにはいかないのが人生だ。とある60代夫婦は、すでに年金暮らしに入っているのに同居する30代独身の息子に経済援助を続けている。親は貯蓄を取り崩していくしかなく、今後の生活費に強い不安を抱いている……。

汀さんが直接担当したわけではないが、全国のFP事務所にはそんな家庭からの相談も増えているという。

「私なら面談時に息子さんも一緒に連れてきてもらい、親の家計がこんな状態なんだということを理解してもらいます。それが問題解決の第一歩だと思いますね」

(文・構成=岡村繁雄)