これまでお話ししたことを踏まえて、私がリタイア後に住みやすいと考える町をいくつか推薦しましょう(図5参照)。
首都圏でまずおすすめしたいのは、東京都文京区です。前述した通り、文京区は総合病院が多く、医療の充実度では都内屈指。医療だけでなく教育施設が多いせいか、治安がよく、地域コミュニティも排他的な印象はありません。
新興住宅地なら神奈川県川崎市の武蔵小杉に注目しています。武蔵小杉は再開発によりタワーマンションが次々に建っています。町としての発展はこれからですが、それは同時に地域コミュニティも発展途上であることを示しています。すでに成熟した地域と違い、発展中なので気後れすることなく外から入っていける点は魅力です。
都心からやや離れて暮らしたいなら、神奈川県藤沢市も見逃せません。いま藤沢市は工場跡地を利用したスマートシティ構想を進めています。スマートシティ自体が住みやすさにつながりますが、それ以上に、こうした町ぐるみの仕掛けで人口が増える効果が大きい。人が流入してくれば店が増えて生活利便性が高まるし、行政の財政基盤が強化されて行政サービスの質もよくなります。もともと温暖で過ごしやすいこともあり、今後ますます人気が高まるでしょう。
関西圏でいうと、兵庫県芦屋市近辺は外せません。伝統的に関西は東京と違って職住近接ではなく、良好な住宅地が都心から離れています。その中でも芦屋市は医療機関や行政サービスが充実していて、昔から人気が高い。とくに山側はグレードが高いので、経済的に余裕のある人は選択肢に入れてもいいでしょう。
関西の新興住宅地として注目したいのは、奈良県生駒市を中心とした近鉄けいはんな線沿線です。生駒は大阪市内へのアクセスがよく、それでいて地価が比較的安いため、いま続々とファミリーが家を建てています。
意外なところでは、滋賀県の大津市も注目しています。大津は京都・大阪はもちろん、名古屋にも約1時間で行ける交通の便が魅力です。
いま紹介した町は、現役世代にとっても住みやすい町ばかり。リタイア後の暮らしを見据えていまから移り住むのも、悪くない選択かもしれません。