厳しいけれど、透明性と公平性がある

決して「女性にだけ優しい」会社ではないユニ・チャーム。しかし、評価や求められることがクリアで、大変な分、お給料も高い。女性の活躍見える化サイトで見ても、残業時間は多く、有給消化率は低いが、平均給与が業界で群を抜いて高いという特徴があります。

世界80カ国に進出し、アジアに拠点も多い。サウジアラビアには「女性だけの工場」を創り、今年の日経ソーシャルイニシアチブ大賞に選出されています。私は表彰式の現場にいたのですが、社長の高原豪久さんが受賞のスピーチで「最初はサウジアラビア政府の圧力で、日本人社員のビザの発給枠を増やしてもらうために作ったのですが」と正直に話され、飾らない態度に驚きました。

イスラムの戒律が厳しいサウジアラビアでは、女性は黒いベールで顔を覆い、外で働くことが制限されています。彼女たちにとって、自立して働くことは新鮮な喜びでもあります。工場で働くサウジの女性から「誇りを持って働くことができて本当に幸せ」というメッセージが会場で流され、高原社長が心を動かされた様子に、こちらまで感動したというひと幕がありました。

実際に話を聞いてみると、女性に優しいどころか、ハードワークで厳しいという会社でした。しかし透明性も公平性もある。

女性に優しい制度を備えながらも、能力のある女性たちが「もう私のキャリアは子育てで終わった」とモチベーションを保てず辞めてしまう会社も多いなかで、子育てしながらも活躍したい、実力をつけたい、フェアにやりたい女性にはチャレンジしがいのある職場ではないかと思いました。

創業後長いのに、ベンチャー企業のようですね……と最後に聞いたら、

「うちは戦後のベンチャー第1号なんですよ。そのスピリットはずっと失われていないんです」と清水さんは誇らしげに答えてくれました。

白河桃子
少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大客員教授、経産省「女性が輝く社会の在り方研究会」委員

東京生まれ、慶応義塾大学文学部社会学専攻卒。婚活、妊活、女子など女性たちのキーワードについて発信する。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活」を提唱。婚活ブームを起こす。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア、男女共同参画、女性活用、不妊治療、ワークライフバランス、ダイバーシティなどがテーマ。「妊活バイブル」共著者、齊藤英和氏(国立成育医療研究センター少子化危機突破タスクフォース第二期座長)とともに、東大、慶応、早稲田などに「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプランニング講座」をボランティア出張授業。講演、テレビ出演多数。学生向け無料オンライン講座「産むX働くの授業」も。著書に『女子と就活 20代からの「就・妊・婚」講座』『妊活バイブル 晩婚・少子化時代に生きる女のライフプランニング』『婚活症候群』、最新刊『「産む」と「働く」の教科書』など。