年々人口が減少の一途を辿る日本にいると、「マイナス成長」が当たり前のように思えてくる。しかしながら、世界に目を転じれば、「成長のポテンシャル」を持つ国々が溢れている。タイで、ビジネスチャンスを見つけた人たちを追ってみた。
元電通マンが仕掛ける「ペットビジネス」
電気部品を使っていないシャワー式トイレでタイのトイレライフを進化させているのが成田親子だとすれば(http://president.jp/articles/-/12761)、タイのペットライフの変革の主といえるのが、山内正太郎氏(45歳)だ。タイのペット市場の現実に目を向けて起業に至った山内氏のキャリアは、「華麗」という言葉がふさわしい。
92年に電通とGE社との合弁会社、電通国際情報サービスに入社し、04年に電通の関連会社としては歴代最年少でシンガポールやマレーシアの現地法人の社長に就任すると、日系企業のみならず、ナイキやサムスン、現地のメーカーといった非日系企業も積極的に顧客化。設立以来12年間続いた連続赤字をわずか1年で黒字化することに成功した。さらに、タイの現地法人と、ASEAN全域を統括するサウスイーストアジアも設立し、構築した基幹システムをクライアント数百社に導入するなど、日本流ではなく、現地のニーズに合った仕組みづくりで事業を軌道に乗せた山内氏は、09年に会社を辞め、起業を決意する。
「本社の方針が変わったのが契機ですね。本社取り扱いの日系企業に顧客が限定され、ソリューションも本社取り扱いのものだけにされた。そのため、タイとマレーシアの現地法人は畳まざるをえなくなり、起業を思い立ったわけですが、それまでの経験から時の変化に備えるのではなく、時の変化をむしろ楽しみながら、事業活動全てが人の幸福につながるオンリーワンのビジネスを目指そうと考えました。IT系からラーメン屋まで、いろいろな業種を検討しましたね。結局行き着いたのが、タイでのペット関連事業。タイで始めたのは、現地法人で雇用していた従業員の受け皿をつくる目的もありましたが、タイがペット愛好家にとって極めて住みにくい環境だったためです」