■石垣のなかできらりと光る小さな石も大切
「人は石垣、人は城」と言うが、企業に見立てれば従業員は石垣。石垣には大きな石も小さな石もある。
大きな石と石との間には必ず多くの小さな石が嵌め込まれ、石垣全体を強固にしている。小さな石のように、能力がさほどなくても人間性が素晴らしく、周りの人の心をまとめ、会社のために尽くし、強固にしてくれている人がいるのだ。
■実際に言葉に出して反省する
感激と反省を口癖にするのが大事。愚痴や悪口など、悪しき習慣は叩き続けて消すことが幸運の鍵だという。稲盛は、「『神さまごめん』『なんまんなんまん、ありがとう』は私の口癖と言えます。つまり反省と感謝の心をこの2つの短い言葉に代表させて自分を律するための、単純ですが、明快な指針としているのです」と言う。
■われわれは物事に対処するに、誠意、正義、勇気、愛情、謙虚な心を持たなければならぬ
人間として正しいことを貫いていくために必要な要件である。人間は、自己中心的な発想から利己心、欲望、倣岸不遜、尊大、嫉妬、恨みといった、「本能心」に根ざした行動をとりがちだ。しかし、このような心で対処しては正しい判断はできない。この「本能心」を超えた、人間の魂から出てくる誠意、正義、勇気、愛情、謙虚な心を持って、ことにあたらなければならない。
これらは口では簡単に言えるが、人生の規範に置き、実行できる人は少ない。これを本当に実行できる人こそ、あらゆる分野において成功を収めることができる。自分にとって正しいことではなく、人間として正しいことを貫いていくことが大事。
■節度があり、礼儀を知り、怖さを知る人が真の勇気を身につけたとき、偉大なことを成し遂げる
企業経営でも、研究開発でも、仕事をするときには、常にさまざまな判断を行っている。この判断が積み重なった結果が現在の自分であり、会社の姿である。そして、要所においては重大な結果につながる決断もしなければならない。その決断の場面では真の勇気が必要となってくる。
しかし、それは蛮勇、つまり粗野で豪傑と言われるような人が持っている勇気とは異なる。節度があり、礼儀を知り、怖さを知る人が場数を踏み、真の勇気を身につけたときに、正しい判断ができるようになり、偉大なことを成し遂げることができる。
■一歩進めば、次の一歩が見えてくる。このようにして偉大なことが達成できる
一歩一歩尺取り虫のように進んでいく。それが偉大なことにチャレンジする姿勢である。これは決して派手なことではなく、まったく目立たない地味なことである。「こんなことで報われるのだろうか」と思うくらい小さな一歩である。その積み重ねが、みなの賛辞を得られるような成功へといつのまにか導くのである。
(文中敬称略)
参考図書・雑誌・資料=『生き方』(サンマーク出版)、『働き方』(三笠書房)、『人を生かす』(日本経済新聞出版社)、『稲盛和夫の経営塾 人を生かす』(同)、『稲盛和夫の経営塾高収益企業のつくり方』(同)、『稲盛和夫の実学』(同)、『稲盛和夫の哲学』(PHP研究所)、『新しい日本 新しい経営』(同)、「プレジデント」誌。ほかに稲盛氏の講演・祝賀会スピーチなど。