“経営の神様”稲盛和夫の言葉には、ビジネスで苦闘する人びとへの示唆と激励が感じられる。私たちがつい忘れ、見逃している、人生を前向きにとらえるための真摯な生き方と知恵の数々──。「心」を震わす稲盛の名言を読む。

■継続というのは、人生を豊かにする秘訣だ

人生はつまるところ一瞬一瞬の積み重ねだと、稲盛は述べている。いまこの1秒の集積が1日となり、1週間、1カ月、1年、そして一生となっていく。人が驚くような成果も、どんな天才が成し遂げたのだろうと思われる偉業も、実は普通の人がコツコツと積み上げたものがほとんどだと言う。つまりどんな大きな夢も遅々たる一歩一歩を積み重ねた果てに、やっと成就するものだ。

■ひたむきに、ただ想え

JALを再建するに当たって、稲盛は中村天風の次の言葉を社員たちに告げた。「新しき計画の成就は、ただ不屈不撓の一心にあり。さらば、ひたむきに、ただ想え、気高く、強く、一筋に」。JALを再生するんだ、何としても再生させるんだ、そして残った3万2000人の従業員を守っていくんだ──この意識を、稲盛は社員たちに植え付けようとした。すべては、想いから発するというのである。

■もうダメだと思ったときが、仕事の始まり

有名企業の研究者たちを前に、稲盛は「京セラでは、手掛けた研究開発は100%成功させます」「京セラでは、研究開発は成功するまでやり続けますので、失敗に終わるということがないのです」と話して、失笑を買ったことがある。しかし、どんな仕事においても、「もう無理だ」「もうダメだ」と思ったときを終点とは考えず、むしろ「第二のスタート地点」ととらえて、さらに強い意志と熱い情熱をかきたてて、とことんやり抜く。

■順境ならよし。逆境なら「なおよし」

大学卒業と同時に入社した会社は周囲からぼろと言われる会社だったが、そのために苦難や、挫折を知った。その経験から、自分の環境、境遇を前向きにとらえ、いかなるときでも、努力を重ね、懸命に働き続けることが大切なのだと言う。

■悩む暇があったら、誰にも負けない努力で働く

稲盛は「悩むな」と言う。深く考える、考えて考えて考え抜くことはするが、問題に対する対策を決めたら、後は悩まない。はたして吉と出るか凶と出るかはわからないが、わからないことを悩んでも仕方ない。悩みを感じる暇もなく仕事に打ち込みながら、「生きているだけでも幸せではないか」と感謝する心を育てることで、悩みは収まるとも説く。