打ち上げ花火のように一瞬華やかに見えても、すぐに消え去っていく成金たち。彼らの生態と没落していくその理由を探る。

「銀座のクラブで成金は早くて3カ月、もっても半年から1年で消えます」と心理カウンセラーの塚越友子さん。そんな成金の没落原因を塚越さんは、次のように分析する(図)。

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マズローの欲求段階説に存在していた「成金の壁」

「マズローは人間が行動を起こす理由として、まず『欠乏動機』をあげました。人間の欲求は5つの層からなるピラミッドを形成していて、底辺は生理的欲求。そこから上部の安全欲求、親和欲求、承認欲求へと、自分が満たされていないものを追い求めます。これが欠乏動機です。そして最後に頂点の自己実現へ向かいます。成金は他者との関わりを持つ親和欲求までは容易に満たせますが、『他者から価値ある存在と認められたい』という4番目の承認欲求で壁にぶつかる。そこでお金をつかって無理に自分を大きく見せようとして、ダメになっていくのです」

成金の人たちが見るからに金持ちそうな高級ブランドの服装を好むのも、「身体像境界」という理論で説明がつく。自分についているイメージが身体像で、外界との境界線が身体像境界。その身体像境界が大きくなるほど、自信を持って周囲の人と接することができる。成金は人に認められていないという劣等感が常につきまとい、高級ブランドの服を身にまとうことで身体像境界を大きくしようとしているのだ。

「もっとわかりやすくいうと、成金は『美味しいものが食べたい』『いい家に住みたい』など満ち足りない欲求を解消するため、懸命に自分の事業を拡大しながら欲求のピラミッドを駆け上がっていきます。でも、ふと周囲を見渡すと、自分が本当に認められてはいないことに気がつく。そこで『お金も余っていることだし、こんなにお金をつかえる身分になったことをわからせてやろう』という気持ちが芽生えてきます。その結果、自分自身の目標を見失い、事業自体もピークアウトを迎えてしまうことが多いようなのです」