打ち上げ花火のように一瞬華やかに見えても、すぐに消え去っていく成金たち。彼らの生態と没落していくその理由を探る。

「本当のお金持ちでも成金でも、自動車といってすぐに思い浮かぶのがベンツ。でも、両者の間には大きな違いがあります。成金はピカピカの新車を買いたがり、本物のお金持ちは4年落ちの中古を買いたがるものなのです」と紹介してくれたのは、家計の見直し相談センターの代表で、お金持ちから一般のサラリーマン家庭まで幅広く家計相談にのっている藤川太さんだ。

事業用に自動車を購入した場合、耐用年数に応じて償却が認められ、節税対策に役立てることができる。新車の耐用年数は6年で、600万円の新車のベンツを毎年均等に償却していったら「600÷6」で1年当たりの償却額は100万円。それに対して4年落ちの中古車の場合、税務当局が定めたルールで耐用年数を計算すると2年になる。300万円の中古のベンツであっても、1年当たりの償却額は「300÷2=150万円」で、新車より大きな節税効果が得られる。

本物の金持ちは、成金のような見栄よりも、自分にとってのメリットや価値を重視することの一例なのだが、長らく銀座の高級フランス料理店のオーナーシェフを務めていた岡田正彦さん(仮名)も「成金は料理の価値ではなく、一流という評判の高いお店であったり、一般の人がおいそれと手を出せない値段の料理やお酒を提供すればするほど喜んでいました。本当のお金持ちは、その正反対なのです」という。

(PIXTA=写真)

岡田さんの店ではシェフがお客さまに付きっ切りでサーブする1日1組限定のサービスが売り物で、1人当たり5万5000円のコースが基本なのだが、平均単価は15万円に跳ね上がっていた。料理の味もろくにわからない成金がやってきては、大枚をはたいていくからだ。岡田さんの記憶に残っている成金が1人で一晩につかった最高額は120万円だったそうだ。

「なぜそれほどまでに高くなったかというと、確か60万円のシャンパンを頼んだからです。成金は表ヅラはとても気前がいい。私にもふるまってくれたのですが、尊大な態度にカチンときた私は『せっかくですから、このお酒でソースを作ってみせますよ』と提案しました。もちろん腕には自信があります。成金は迷っていましたが、構わずシャンパンを鍋に注ぎ始めると、『本当にやるの』と慌て始めました。美味しい料理を楽しもうという探求心など少しも持ち合わせていないのです」