100年先も生き残る企業とは、堅牢な高層ビルのようなものである。それを建設するには、相応のしっかりとした幅広の基礎をつくらねばならない。仮に基礎をおろそかにし、上に伸ばすことだけを急いだとしたら、結局は脆弱なペンシル・ビルになり、うっかりすると大嵐でぽきんと折れてしまうかもしれないのだ。

ちょうどそのころ、40数年来、毎月のように参拝している京都・八瀬の九頭竜大社のおみくじにも、「あせらずひたむきに」という教えが出た。九頭竜大社のおみくじは、社業の調子がいいときは「おごるなかれ」、墓参りをおろそかにしていると「先祖を大切にせよ」と出る。だから「あわててはいけない」も、私にいわせれば神様からの戒めなのだ。

思えば日本電産も、将来を見据えて95年から車載用モーターの研究を始めている。研究開発費として、すでに1000億円以上を投じている。すぐに成果につながらないという意味では、無駄だといわれかねない投資だろう。だが、そうした基礎がなければ、今後急速に伸びていく車載市場で、まともに勝負をすることは難しかったに違いない。

研究開発だけではなく、採用、人材育成など、目先の景況感で削ってはいけないロングスパンの投資はほかにもある。これらを簡単に削れば、将来の成長に必ずマイナスとなる。

100年企業をつくる。その目的と構想が合理的であれば、一時的な収益悪化はやむをえないというべきだ。かつての投資家には、それを許し、10年単位でものを考えるゆとりがあった。

いまはそうではない。四半期の収益に一喜一憂し、次の3カ月でどれだけ生産性を上げるかにしか注目しない。目先の数字が悪ければ株を売る。いわば「お金の逃げ足が速い」のだ。世界経済の状況が少し落ち着き、成長の先を見通すことができないうちは、こうした短期志向の投資は続くだろう。