今年で創立40周年を迎える日本電産。売上高7000億円の規模に、同社が成長できたのは、永守社長が率先して毎日働き続けた結果でもある。逆風の中、いま彼はどんな時間軸で未来を見据えるのか。

(※第1回はこちら http://president.jp/articles/-/12500)

「あわててはいけない」「おごるなかれ」

日本電産社長 永守重信氏

いまは不確実な時代である。08年のリーマンショック以来、予期しえない経営課題が次から次へと襲ってくる。たとえば11年に相次いだ東日本大震災、タイの大洪水では現地の生産拠点に被害が出た。12年にはタブレット型PCが予想以上の速さで市場を席巻し、PC向けの事業が大打撃を受けた。

その間、一貫して円高が進んだことも製造業にとっては痛手だった。決済通貨であるドルやユーロに対して円が高いのは非常に問題だ。しかし、それ以上に、ウォン安が定着した韓国企業との競争には決定的なハンデとなってしまった。

3年3カ月あまり続いた民主党政権が、円高をはじめ経済問題にあまりに無頓着だったという側面はあるだろう。自民党・公明党連立政権には、経済の活性化をなによりも重視してもらいたい。

しかし、それはそれとして、企業の自助努力が必要なのは当然である。「100年先も生き残る企業」を目指すには、何が必要なのか。

この2年のうちに、私たちは100年以上の社歴を持つ海外企業を3社買収した。国内でM&Aの対象になるのは、本業が行き詰まった会社と決まっていた。しかし海外では事情が違い、3社はいずれも、ブランドと販路と技術とをあわせ持つ優良企業だ。なぜ100年以上も続くのか。現地へ赴き、内部の人と会い、そのことを考え続けた。

「あわててはいけない」

これがそのときに得た結論だ。目先の株価、目先の利益に惑わされず、将来を見据え、必要な投資を粛々とやっていくこと。長期的にバランスのとれた発展をするには、そのことが何よりも大切なのだと気づかされた。