つまり50代半ばに一定のキャリアやスキルを磨くことが重要ということだ。とくに最近は求人より求職者が圧倒的に多く「働きたいという事務系ホワイトカラーは多いが、求人案件が少ない」(高平事業本部長)のが現実。事務系職種の求人案件は全体の3割程度という。

早船利信氏(61歳)は定年の3カ月後に自分の理想とする週2日勤務の職場を射止めた一人だ。前職は製薬会社の100%出資子会社の事業部長。工業高校卒業後、本体の製薬会社に入社し、以来、社歴の半分以上を工場の生産技術部門で働いてきた。その間に社会人大学・大学院に通い、修士号を取得するほどの努力家でもある。

早船氏の派遣先企業はなぜか不動産などを扱う金融信託会社だ。金融というまったく異なる業種で職を得ることになった決め手は資格にあった。

「私は金融は門外漢ですから、本来なら私のような人材は必要なかったと思います。ところが、今年7月の再生可能エネルギーの全量買い取り制度のスタートを機に、広い土地を持つ信託会社と大手メーカーが組んで太陽光や風力発電施設の建設と運用の事業を始めたのです。そこで電気のわかる人が必要ということになった。私が生産技術部門時代に取得した第二種電気主任技術者の資格を持っていたことから白羽の矢が立ったのです」(早船氏)

培ったキャリアや資格がどこで生かされるのかわからない典型的事例だ。早船氏は12年1月から同社に派遣。現在、同社の再生可能エネルギープロジェクトの技術アドバイザーとして活躍している。プロジェクト会議にメンバーとして参加し、技術的に押さえるべき点などをチェックするのが大きな役割であるが、資格とは別に前職で事業部長まで務めたマネジメント力も買われての採用であることは想像に難くない。

もちろん前職での再雇用の道も選択できた。しかし早船氏は「前の会社では生産技術部門だけではなく、本社の総務・人事部門なども経験し、最後は子会社の事業部長といろいろやってきました。もういいかなという感じでしたし、働く環境を変えたかった」と語る。