「叱る」が常態化すると危ない

経営者の中には、「社員への理解が大切なのはわかりますが、実際には難しいですね。そんなに甘くはありませんよ」と言う人もいます。真面目だがミスを繰り返す経理課長、人はいいが売れない営業所長……。部下に対する経営者の悩みは尽きません。だからつい高圧的に叱りつけることになってしまいます。その気持ちはわかります。また、ときには叱る必要があるのも当然です。しかし、それが常態化していることに会社のリスクが潜んでいます。

一方的に言われた部下は納得しないまま「わかりました」と言ってその場を早く切り上げようとします。面従腹背です。経営者は部下が理解したものと思い、成果に期待します。しかし部下に主体的なパワーは宿っていませんから、計画と結果にズレが生じ始めます。また、部下は自分で考えていないため、何かあっても軌道修正ができません。こうして計画と結果のズレは大きくなっていき、再び経営者の叱責に戻るという負のスパイラルです。

また、往々にして、その部下は同じことを下にやります。そうやって「面従腹背の連鎖」、「考えない組織文化」ができていきます。「うちの社員は言われたことしかやらないよ」と嘆く経営者は、その原因を自分がつくってきたのかもしれません。