日本メガソーラー整備事業の目崎雅昭が「初期投資をいかに抑えるか。それが太陽光発電事業を定着させていくうえでの一番のポイントになる」と何度も口にする理由も、このグラフを見てわかるように、買い取り価格が低くなっても初期投資が小さければ、早期にその回収ができて、適正利益の確保が可能になるから。
もっとも、FITでは当初の3年間は発電事業者の利潤に配慮するよう決められ、買い取り価格も高めに設定された経緯がある。日本総合研究所の副主任コンサルタントでメガソーラー事業のコンサルティングを行っている岡田匡史は、「12年度の42円という高い買い取り価格なら、場所などの条件によって多少変わってくるが、ほとんどの場合は10年を切る段階で初期投資を回収できるはずだ」と語る。極端な話、誰がやっても儲かるわけで、そのことがソーラーバブル発生の呼び水になったことは否めない。
また、そこで何が生まれるかというと、初期投資に対するコスト意識の甘さ。「某大手の発電業者は取引関係のある電機メーカーの関連EPC業者に丸投げ状態で、45万円前後のシステム単価に何の疑問も持たず認めていた」とあきれ顔で語るのは前出の村沢である。
目崎のような「買い取り価格がドイツと同じ水準になってもできるようにしたい。なぜなら、彼らはそれでやっているのだから」という考えに同調する発電事業者はまれで、「当初3年間に優遇された買い取り価格の“プレミアム期間限定”の事業と割り切っている」「買い取り価格が30円を下回ったら、新規投資はしない」といった声が大勢を占めている。
どうやらメガソーラーは、プレミアム期間が終わる15年3月末で大きな曲がり角を迎えることが宿命づけられていたようだ。そして、その“2015年問題”に切り込もうとコストダウンに取り組み始めた目崎の目の前に現れたのが、かつて世界ナンバーワンだった日本のソーラー市場の“ガラパゴス化”という予想もしていなかった現実だった。
(文中敬称略)