「タダほど高いものはない」受験生の信頼を損なわない“980円”

所得格差がテーマになる以上、重要になるのが料金設定だ。松尾氏も、オンライン予備校のコンテンツを構築していく上で「大きなポイントになった」と振り返る。

「過去問ダウンロードや模試などの無料利用の部分については問題ないのですが、苦労したのはオンライン予備校の料金設定。なるべく安くしないと、格差解消の意味で有用になりません。かといって安すぎると、かえってユーザーの不安を生む懸念もありました。教育サービスなので、『安すぎて怪しい』と思われる可能性もあったんです。それらを踏まえて、ユーザーが払える金額、なお且つ、良いサービスと思ってもらえる最低下限金額を探ったところ、月額980円という設定になりました」(同)

利用者の反応を追うと、「親に塾のお金を出してもらうのは心苦しかったけど、980円ならOKしてくれた」という声が多数聞かれたという。

なお、受験における格差は所得だけではないようだ。松尾氏は「住む地域による格差も大きいものがある」と指摘する。

「たとえば地方のある高校生にヒアリングした時、経済的には十分でも、予備校が街中にしかなく、家から電車を乗り継いで2時間半かかるとのことでした。それが理由で通うのをあきらめていました。日本全体で見ればこのような悩みを持つ高校生はたくさんいて、彼らは地域による受験格差を抱えています。そういう受験生たちが、住んでいる場所や時間に関係なく使えるコンテンツとして活用してもらえればと思いますね」(同)

低価格で所得に依らず、地域を問わない。そういった利便性も、高校生のニーズに合致したことは確かだろう。

スマホネイティブの高校生は『スマ勉』が主流

いつでも、どこでも勉強できる「スマ勉」派の高校生が増えている。

センター試験や大学の過去問だけでなく、予備校講師の講義も動画で配信するなど、受験サプリは徹底してオンラインサービスにこだわった。これも、今の高校生の生活環境にフィットしたのではないだろうか。

「オンラインでの学習は、今後、受験生のライフスタイルとして確実に一般化していくと思っています。もちろんそこにはスマートフォンの普及が関連していて、実際、スマートフォンで勉強する高校生は近年増えています。受験サプリ自体も、スマートフォンからの利用が約7割。時間や場所にかかわらず学べる便利さが理由でしょう。私たちはこのスタイルを『スマ勉』と呼んでいるのですが、そういった高校生の潮流も、受験サプリが広まった一因だと考えています」(同)