自らマスコミの格好の餌食に
「ちょっと記憶にはないんですが、もしそこが音声の中にそれが入っているのであれば、そうなんだろうというふうに思います。発言としてはですね。」という答え方も、他人事のような、責任逃れの言い訳に聞こえます。すべて事態鎮静化のためのセオリーの真逆を選び、事態は収まるどころか、火に油を注ぐ結果となりました。
軍事戦略で悪手の代表ともいわれる「戦力の逐次投入」とは、兵力を小出しに展開した結果、ひたすら負け続けて損害だけが膨らむ、というものです。立場の存亡がかかった危機において、説明やお詫びを小出しにしていく対応は、これにあたるのではないでしょうか。
最初は説明から逃げ、次に渋々、音声があるなら発言しただろうと認める。さらに追及されて、誤解を招く表現だったと述べる――これでは取材陣からのツッコミの度に新たな炎上材料を提供してくれる、自ら「オイシイ事件」に仕立て上げてしまっているといえます。
「悪材料は一気に出す」が鉄則
不祥事への対応で失敗する企業はこれときわめて似た構図を描きます。「調査中」で始まり、証拠が出たり、告発があってから一部を認め、後から損害規模等の数値が増えていく、後出しで悪い情報を流し続ける構図です。
危機管理の原則はこの逆で、「出せる事実、特に悪材料は、なるべく早く、できれば一気に出す」ことです。不利な内容でも、先に自分で出し切ったほうが、被害は小さく済みます。
同じ発言でも、いつ、誰が、どのような状況で言うかによって、燃え方はまるで異なります。私はこれを発言者の「可燃性」と呼んでいます。炎上の火は、発信者によって燃え広がりやすさが変わるということです。
何を発言しても批判される芸能人や、そもそも批判を煽ることによってアクセスやビュー集めを狙う「迷惑系」配信者もいます。
簗氏は旧安倍派に所属し、政治資金をめぐる問題で党の処分を受けた経緯が報じられてきました。さらに自民が圧勝した今年2月の衆院選でも小選挙区では敗北。比例代表で復活当選しました。
しかし高市首相自ら「私の知恵袋の簗ちゃん」と呼ぶ関係ということで、異例ともとれる農相抜擢は、マスコミや野党から厳しい目を向けられやすい立場にあったはずです。
そうした可燃性の高さへの自覚はあったのかという疑問があります。

