真のリーダーの条件は、人がついてくるかどうか
コロナ禍が落ち着いた後、航空機に乗ると、CAが近づいてきて「コロナのとき出向に行きました。両親が感謝していました」「出向先には、鉛筆とノートを持っていきました」と打ち明けられたことがたびたびありました。あるCAは「まるでお父さんみたいでした」と。メッセージが何かしら社員の力になっていたなら、伝えた甲斐があるというものです。
真のリーダーとは、人がついてくるかどうかだと思います。たとえ的確な指示ができても、みんなが「この人ならついていきたい」と思わないと組織は危機を乗り越えられない。コロナ禍から数年経って当時のことを振り返り、あらためてその思いを強くしています。
私は山岡荘八の『徳川家康』を愛読しているのですが、彼もまた目指すべきリーダー像の一人ではないでしょうか。物語の味わい深いところは、名だたる大物武将だけでなく、名もなき末端の家臣たちまでが生き生きと描かれている点にあります。主役となる人物だけでなく、現場の隅々で働く人たちと同じ目線を持ち、「この人を支えたい、ついていきたい」と思わせる人間としての魅力や温かみがあった。それこそが、幾多の困難を乗り越える最大の原動力になったのだと思います。小説の中の話ではありますが、未曾有の危機において現場の社員たちに支えられた経験とも、深く重なるものを感じています。
次世代の経営者候補たちへ
立場上、これからの時代を担う次世代の経営者候補に話をする機会があります。そこで私が伝えているのは、「平時のマネジメント術」ではありません。想定外の危機がいつ襲い来るか分からない今の時代において、修羅場を乗り越えるために大切な「経営者として必要な人間性」とは何か、ということです。
どんなに優秀でも、都合の悪い事実を隠す人や、現場の声を聞けない人に、社員はついてきません。トップに立つべきは、泥臭く現場を支える社員に光を当て、痛みを分かち合える人間です。そして、絶望の淵でも「未来は明るい」と自ら信じ抜き、誠実な言葉で語り続ける人だけが、トップをやり抜くことができる。私自身が戦時のリーダーとして経験したからこそ、そう断言できます。そんな人がついてくる、強くて温かいリーダーがこれから一人でも多く現れることを、心から願っています。
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