開幕前から相次いでいた不手際

スポンサー集めなどを委託する予定だった電通は、業務の受託を辞退した。時事通信は、東京五輪・パラリンピックをめぐる談合事件の影響もあったと報じている。電通が全国に持つ営業ネットワークに頼れなくなった組織委は、地元の代理店など4社の共同事業体と組み、担当者が自ら企業を回ってスポンサーを募った。

これに中部地方の経済界が応え、スポンサー収入は目標額を上回る約270億円となった。組織委の中森康弘副事務局長は、「地元が結束する熱が生まれた。電通主導だと冷めていた可能性がある」とまで語る。2019年ラグビーW杯日本大会の組織委で企画局長などを務めた内田南氏は開幕前、「この運営を回しきれば、すごい成果だ」とみていた。

だが、内田氏が成功の条件とした運営そのものが、開幕前から揺らいだ。分散した宿舎や輸送で不備が相次ぎ、式典の演出は一部の参加国の反発を招くことになる。

9月8日。名古屋が1時間雨量約104ミリの記録的な豪雨に見舞われると、港に設けられたコンテナ型宿泊棟から、選手やスタッフ約400人が一時高台へ避難した。AP通信などが報じている。

避難は豪雨によるものだが、宿泊棟そのものにも不満が相次いだ。アウトルック・インディアが伝えたところでは、韓国の関係者はベッドが短すぎると訴えた。韓国のバスケットボール選手は、洗面台から水が漏れて床が水浸しになった部屋の動画を投稿した。

移動式宿泊施設を視察する関芳弘文部科学大臣
移動式宿泊施設(コンテナ型宿泊棟)を視察する関芳弘文部科学大臣(出所=文部科学省ホームページ)

韓国が猛反発した組織委員会の「釈明」

9月16日には、宿泊先のクルーズ船で、乗船の受付が長時間にわたって滞った。インドのPTI通信によれば、同国のボート選手らは12時間以上待たされたという。「待って、待って、部屋に入れたのはほとんど真夜中だった」と、選手の一人は語った。さらに、タイの選手たちはチェックインを待つ間、受付の床で眠ったという。男女が同じ部屋に割り当てられるなどの混乱も目立つ。

宿舎や輸送とは別に、韓国との間では式典の演出をめぐって摩擦が生じた。15日にクルーズ船の到着に合わせて開かれた歓迎式典には名古屋ゆかりの武将に扮した演者が登場し、その中に16世紀末に朝鮮半島に侵攻した豊臣秀吉がいた。韓国日刊紙の京郷新聞などが顛末を報じている。

香港英字紙のサウスチャイナ・モーニングポストによると、韓国選手団のイ・サンヒョン団長は22日、輸送や宿泊の不手際を批判し、より上位の責任者による正式な謝罪を求めた。

組織委は同じ22日に声明を発表し、16日のクルーズ船乗船をめぐる混乱について、遅れと混乱の主な原因は一部の選手団の書類不備だと釈明した。大韓体育会のリュ・スンミン会長は24日、組織委が「言い訳をしている」と非難し、「採点するならFだ」と切り捨てたと、AFP通信は伝えている。