ウイルスが神経内をじわじわ浸食する
狂犬病は過去の病気で、今は関係ないと思っていないでしょうか。しかし一度発症すれば現代の最先端医療でも「ほぼ100%死亡する」、人類史上最悪のキル・スイッチなのです。
なぜ狂犬病がこれほど恐ろしいかといえば、単に内臓を壊すのではなく、そのウイルスが脳を直接ハッキングし、まるで狼男のように水を恐れさせ、凶暴化して他者を噛むよう「行動を強制プログラミングする」悪魔のようなメカニズムを持つからです。オカルトのベールで覆われてきた、ウイルスと人類の生存をかけた闘いを完全解剖します。
狂犬病の歴史は古く、紀元前1930年頃の『エシュヌンナ法典』には「狂犬が人を噛み殺した場合、飼い主は罰金を払え」と記されていました。通常のウイルスは血流に乗りますが、狂犬病ウイルスは牙から筋肉に入り、末梢神経の内部に侵入します。
神経内は免疫システムが届かない死角であり、一日に数ミリから数センチの遅いスピードで脳へ進むため、足を噛まれるより首や顔を噛まれた方が早く脳に到達しました。
なぜ狂犬病患者は水を怖がるのか
潜伏期間は数週間から数カ月に及び、噛まれた傷が治り、忘れた頃に悲劇は幕を開けます。ウイルスが脳に到達すると最悪のシステム・ハイジャックが始まり、残酷な恐水症が発動します。極度の渇きを感じているのに、水を見たり音が聞こえたりしただけでのどの筋肉が痙攣しパニックに襲われるのです。
これはウイルスがのどの神経を麻痺させて嚥下障害を起こし、ウイルス入りの唾液を口腔内に溜めさせ、他者を噛んだ際に感染確率を極限まで高めるためなのです。口から泡を吹き、凶暴化して目の前の動くものに噛みつく。自らのコピーを他者に拡散するため、人間の肉体を歩く注射器のように遠隔操作したのです。
この「凶暴化し他者に噛みつく」症状から、狼男を思い浮かべた人も多いでしょう。中世ヨーロッパでは狼男伝説が信じられ、人狼裁判で多くの人々が火あぶりにされました。現代医学の観点からは、この伝説の背景に狂犬病のパンデミックが関与していた可能性が指摘されています。

