家も娘の学習机も、妻に相談せず決めていた
家を購入するときも、両親が資金を援助してくれることを理由に、隆夫さんは自分の実家近くの物件にすることをほとんど一人で決めていました。順子さんには「子育てするならこのエリア」と考えていた場所がありましたが、その希望を十分に聞いてもらえないまま話が進んでしまったのです。
娘が小学校に入学するときには、順子さんの知らないところで自分の母親と相談し、学習机を購入してしまいました。
「なぜ一言、希望を聞いてくれないの?」
そう言うと、
「学習机なんて、どれも同じだろう?」
と返されました。
順子さんは、一人娘と一緒に学習机を選ぶ機会を失ったことをとても悲しく思いました。
転勤が決まったときも、隆夫さんは家族で話し合う前に、単身赴任すると決めていました。当時は家を買ったばかりで、家族全員で引っ越すのが簡単ではなかったのも事実です。
それでも、まだ近所に友人も少なく、一人で子育てすることに不安を感じていた順子さんは、「せめて決める前に相談してほしかった」と思いました。
隆夫さんの判断基準は、いつも「合理的かどうか」でした。
話し合っても結論が同じなら、わざわざ話し合う必要はない。たいした違いがないなら、手間をかけずに決めればいい。
けれど、順子さんが求めていたのは「正しい結論」だけではありませんでした。
いつしか「不満を感じる自分がおかしい」と思うように
たとえ話し合った結果が同じでも、自分の気持ちを聞いてほしい。合理的かどうかとは別に、自分が大切にしたいものがあることをわかってほしい。
以前はその思いを隆夫さんに伝えようとしていました。しかし、何度言ってもわかってもらえません。
隆夫さんは基本的には穏やかな性格で、悪気があるようにも見えません。
そのため順子さんは、いつしか「こんなことで不満を感じる自分がおかしいのではないか」と思うようになり、最近では夫に反論することも少なくなっていました。
自分が留守にしている間に食器を捨てられたことで、順子さんはこれまで長い間、自分の気持ちを抑え込んできたことに気づきました。
「この人は、私が何を大切にしているのか、知ろうとしたことがあっただろうか」
順子さんは「自分はこうしたい」という気持ちを心の奥にしまい込み、隆夫さんの決めたことに合わせるのが当たり前になっていました。
もう自由になりたい。
自分のことは自分で決めたい。
残りの人生は自分らしく生きたい。
自分が大切にしたいものを、大切にできる暮らしがしたい。
順子さんの脳裏に「離婚」という言葉が浮かびました。

