座りすぎは「緩やかな自殺行為」

「運動を習慣にしましょう」と言うと、多くの50代は「ジムに入会しなきゃ」「毎日走らなきゃ」と身構えます。そして、ハードルが高すぎて挫折するか、逆に頑張りすぎて膝や腰を痛めてしまいます。

循環器内科医として、まず意識を変えていただきたい点があります。

50代にとっての最大の敵は、運動不足というよりも“座位(座りっぱなし)時間の長さ”です。 長時間のデスクワークやソファでのテレビ視聴は、下半身の筋肉を停止させ、血流を滞らせます。これは代謝を下げ、血栓(血の塊)のリスクを高める、いわば“緩やかな自殺行為”です。

1日1時間ジムで汗を流しても、残りの10時間を座りっぱなしで過ごせば、その健康効果は相殺されてしまうという研究データもあります。通常は12時間に12回立つことを推奨しています。

一方で、真面目な人ほど陥るのが“過剰運動(オーバートレーニング)”です。「昨日は飲みすぎたから、今日は倍走ろう」。この考え方は50代には危険です。加齢によりリカバリー能力が落ちている状態で無理を重ねると、自律神経のバランスが崩れ、かえって免疫力が低下したり、不整脈を誘発したりします。

アップルウォッチで計測した安静時心拍数が平均より10高い、心拍変動が平均より10低い日は、勇気を持って運動を休むこと。これもまた、立派な“健康管理”です。

1週間に1回のジムより1時間に1回のスタンド

何を習慣にすべきか。それは、ジムに行くことよりまずは、「1時間に1回立ち上がること」です。これだけで、滞った血流がポンプされ、脳への酸素供給も回復します。

アップルウォッチの「スタンド(青いリング)」は、この地味ですが極めて重要な習慣を管理するツールです。

緑のエクササイズリングが1周しているので、この日は、十分な運動量があったことがわかる。
緑のエクササイズリングが1周しているので、この日は、十分な運動量があったことがわかる。[出所=『アップルウォッチで整える 50代からの「最高のコンディション」』(技術評論社)]
スタンド(青):1時間に1分以上立って動く(通常12時間につき12回が推奨)

1時間ごとの目安:1時間座り続けず、少なくとも1分〜5分程度は立ち上がって動きます(歩く、ストレッチする、お茶を汲みに行くなど)。
回数の目安:8時間勤務であれば、少なくとも8回以上、理想的には10〜12回程度、1時間ごとの立ち上がりを意識します。
より積極的に動く場合: 厚生労働省のガイドでは、座りっぱなし防止には30分に1回の休憩が推奨されています。

エクササイズ(緑):1日の早歩きなどの運動時間を設定する

●健康的な生活・生活習慣病予防:1日合計30分以上の早歩き(息が弾み、汗をかく程度)。
●歩数との組み合わせ:理想は1日8000歩、かつそのうちの20分を早歩きにすることを目標にしましょう。
●最低限のライン:忙しい場合でも、1日12分の早歩きをします。