言いたいことを突きつめて、徹底的に考えること
今回はリアルディア代表の前刀禎明さんにお会いして、プレゼンや人に伝えるときの極意をうかがった。
アップル日本法人の代表取締役としてとして唯一米国アップル社のエグゼクティブミーティングに出席をし、スティーブ・ジョブズ氏に日本を託されiPodを普及させた男、としてご存知の方も多いだろう。詳細プロフィールは別記させていただくが、話は立て板を流れる水のごとくに流暢であり、かのジョブズに薄型パソコンを提唱したのも前刀さんである。
毎朝テレビに出演をされていることもあり、その服装はダークなスーツにパープルのシャツ、そこに同系色のチーフが胸のポケットに入るなどスマートだ。紫というのは、心理学的には青の鎮静効果と赤のエネルギッシュなパワー、その両方の性質を持ちあわせるために感性を鋭くしインスピレーションを高める……などというけれど、ウンチク効果よりも、ご本人に似合っていることで人を引き立て、自信にもつながっていくものだ。
まずは、そんな前刀さんのプレゼンに臨むときの姿勢を拝見していこう。前刀さんはこんな風に話されていた。
「自分らしさには定型はありません。自分らしいプレゼンというのは、その内容はもちろん、自分自身の存在も含めてすべてをワンセットで行うものです。立ち姿、姿勢、見た目も大切で、姿勢がよくなることで声も出しやすくなります。意識はオーディエンスに向け、原稿や台本を読むのではなく、自分の頭の中で“何を言いたいのか”を突きつめて徹底的に考えておくことで、ストーリー性が生まれ、話は流れていきます」
以前にもある実験をお伝えしたが、人に話をするときに、その人の見た目というのは話への信頼度を大きく作用する。かいつまんで説明すると、電話ボックスに10セントコインを残し、次の人物がボックスに入ったときに「10セントがなかったか」と聞いて渡してもらえる確率は、身なりのいい人なら8割弱なのに対し、労働者風の身なりでは3割強にすぎない。一見の印象が、その人の信頼度に影響するひとつの例である
そして、ケネディの若々しい外見でモノクロ映えする赤いネクタイに対し、化粧を拒否してグレーのスーツでボヤケタ印象のニクソンは、テレビ討論で大敗した。ところが、ラジオ討論では、多くの人間が多くの確率でニクソンを支持している。
つまり、その人物が目の前にいる限り、政策や話の中身だけでは“勝てない”ため、自分自身の“プレゼンス”をつくることは非常に重要なのである。そもそも体格などは変えようがないが、それでも効果的にプレゼンをする方法はある。