また、超富裕層の多くは自ら創業した事業そのものにもさほどの執着を示さない。一定の富をつかんだあとは、別の事業へ転じるケースも珍しくはないという。
「一代で大きな資産を築いた人のなかには、ある程度大きくしたビジネスをいったん売却して、飲食業など別のビジネスに移行する例が少なくありません。最初は何が儲かるかを考えて起業しますが、成功したあとは好きなこと、やりたいことに力を注ぎたいと考えるようです」(船井総研・小林氏)
では当の富裕層自身は、お金持ちになるために何が必要だと考えているのだろうか。『日本のお金持ち研究』などの著書を持ち、格差研究でも著名な橘木俊詔・同志社大学教授は、年収1億円以上の富裕層500人(総資産は医師の平均18億~経営者の平均72億円)から回答のあった調査で次のような結果を得た。
「肉体的・精神的に健康である、自分の職業を愛している、正直な人柄。これが彼らの考える経済的成功を収めるための条件ベスト3(図)です。また、一流大学へ行って事業を興すから成功するのではなく、器用さや要領のよさも必要ではないと断じています。個別のインタビューでも、同じことを強調する人が多いですね」(橘木教授)
一方、船井総研の小林氏によると、超富裕層のうち、伝統的な資産家は次のような特徴を持つという。
「非常に長い時間軸で考えている人が多いですね。もちろんビジネスに一生懸命力を尽くすのですが、それは当代だけではなく、次の世代にも事業をつなげていきたいという思いがあるからです。地域との一体感が強いのもこの層です。何世代にもわたってその地域に住んでいるので、地域あっての自分だと考える。地域の人がすなわちお客さまという場合もありますが、そうでなくても、地域に貢献しようという考えが強いのです」