黒くて、赤外線も紫外線も弾くタイプ
選び方にもポイントがあります。特に、真っ黒で赤外線も紫外線も弾くタイプの日傘は効果が高いといえます。白や淡い色の日傘は見た目に涼しげですが、光を透過させやすく、遮蔽という点では黒に劣ります。
また「日傘は女性が差すもの」という感覚は、もう手放してよいと思います。屋外で働く方、部活動の指導者や選手、通学する子どもたち――強い日射の下に長時間いる人ほど、その恩恵は大きくなります。
日傘が差せない場面もあるでしょう。その場合でも、日陰を選んで歩く、休憩を屋根の下で取る、長袖の薄手の衣類で肌の露出を減らすといった工夫は、すべて同じ理屈でダメージを減らしてくれます。要は「熱」と「光」を別々に数える、という発想です。
ハッサクの皮の秘密
ここで、本連載でご紹介してきた成分の話とつながってきます。
私たちが熱中症対策の有望成分として見つけ出したオーラプテンやタンゲレチンは、もともとハッサクやシークワーサーの皮の表面にある成分です。ではなぜ、これらの柑橘がこの成分を持っているのか。それは、果実自身が太陽光からの強烈な紫外線を浴びており、それを防ぐために植物が備えた成分の1つだからです。
植物は動けません。日射から逃げることも、日陰に移動することもできません。だからこそ、外界の熱や光のストレスから自分の細胞を守るための化学的なしくみを、身体の外側――皮の部分に蓄えてきました。
実際、ハッサクの日本での発祥の地は広島県の因島とされ、ゲノム解析からは南方系の柑橘類にルーツを持つことがわかっています。またシークワーサーも沖縄・南西諸島の熱帯・亜熱帯という、強烈な紫外線と高温にさらされる環境で育まれた血を引いているとすれば、その皮にオーラプテンやタンゲレチンという強力な保護成分が豊富に含まれていることも、自然なことのように思えてきます。
植物が外界の熱や光のストレスから自分の細胞を守るために備えた成分を、私たちの身体でも同じように、有害な光や熱に対する防御に役立てることができる。これが、私たちの研究の基本的な考え方です。


