国民の「理解が得られるものとなることを」

ほかの場合も、ほぼ同様に「控え」てこられた(令和2年[2020年]3年[2021年]6年[2024年]それぞれお誕生日に際しての記者会見や、令和6年[2024年]の英国ご訪問に際しての記者会見など)。

しかし、今回だけはご様子が違った。あえて以下のように、おことばを続けられた。

「皇室の在り方や活動の基本は、国民の幸福を常に願い、国民と苦楽を共にすることだと考えており、こうした皇族数の確保の在り方についての議論においても、国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります」
オランダとベルギー公式訪問を前に、記者会見される天皇陛下。2026年6月11日午後、宮殿・石橋の間(代表撮影)
写真提供=共同通信社
オランダとベルギー公式訪問を前に、記者会見される天皇陛下。2026年6月11日午後、宮殿・石橋の間(代表撮影)

天皇陛下の不安と危惧

このおことばは、それ自体としては、皇室のお立場から至極当然の正論を提示されただけのように、見えるだろう。しかし、目の前の政治の現実と突き合わせると、深い意味合いが受け取れる。

このたびの立法府の「取りまとめ」や、それを受けて今後、政府によって進められる法制化が、広く国民の「理解が得られるものとなる」ことに、何ら不安や危惧がないとしたら、どうか。陛下が憲法上の制約もある中で、このような“異例のご発言”を、わざわざなさる必要はなかったはずだ。

しかし残念ながら、ぬぐえない不安や危惧がおありだった。だからこそ、あえて一見、当たり前そうな事柄をことさら“おことば”として、釘を差さねばならなかった。

養子案は過去に否定されていた

今回の取りまとめでは、旧宮家系の民間男性を女性皇族とのご結婚も介さず、養子縁組という法的手続きだけで皇族にする、というすでに小泉純一郎内閣の時に明確に否定されていた乱暴なプランが、多くの党派が反対していたにもかかわらず、無理やり押し込まれている。当事者の皇室も驚かれたのではないだろうか。

小泉内閣での有識者会議報告書で、養子案は「国民の理解と支持、安定性、伝統のいずれの視点から見ても問題点があり、採用することは極めて困難である」と不適格認定されていた(「皇室典範に関する有識者会議」報告書、平成17年[2005年])。そこで養子案を否定した理由の最初に挙げた「国民の理解」という観点が、陛下のおことばで強く打ち出されているのは、おそらく偶然ではないだろう。

世論調査で4割が反対

陛下が言及された「国民の理解」を測る上で参考になるのは、養子案に対するこれまでの世論調査の結果だろう。おことば直近のものを見ると以下の通り。

朝日新聞(5月16、17日)=賛成47%/反対36%
○共同通信(5月16、17日)=賛成43.7%/反対42.6%
読売新聞(5月22~24日)賛成49%/反対37%
日経新聞(5月29〜31日)=賛成45%/反対37%
NHK(6月5〜7日)=賛成45%/反対36%

どの調査でも4割前後の反対がある。その一方で、賛成は5割に届かない。とても国民の「理解」が得られているとはいえない。それが実情だ。