本当に必要な人が「後回し」になっている

このような状況で、静かに「後回し」になっている人たちの存在に、いったいどれだけの人が気づいているでしょうか。

たとえば車いすでないと移動できない人の場合、駅のホームから地下通路や階上の改札口へはエレベーターを使うしかありません。ベビーカーも同様です。

こうしたエレベーターでないと移動が不可能な人たちは、キャリーケースの長い列の後ろに並ぶことになってしまうと、その列が掃けて乗ることができるまで2~3回は待たねばならない状況に遭遇してしまうこともあるのです。

長い列を見てあきらめ、慣れない松葉杖をつきながら不安定な足取りでかなり離れたエスカレーターまで歩いていくことにした、足にギプスを巻いた学生。

大きな荷物を2つずつ運ぶ旅行客でほぼいっぱいになったエレベーターで、わずかにスペースはあったものの、車いすでは入れず、次を待たざるを得なかった人。

ご存じの方も多いと思いますが、駅のエレベーターわきには掲示があって、高齢者や身体の不自由な人、妊婦やベビーカーに乗せた幼児を連れている人など、階段やエスカレーターの利用が困難もしくは危険である人たちを優先するよう明示されています。

エレベーターの扉に優先エレベーターの文字
写真=iStock.com/y-studio
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「数分の待機」が命取りになる

一方で、大きな荷物を運ぶ人や階段など他の手段で移動することが可能な人の利用を禁ずる表示もありません。

大きな荷物を運ぶ人にとっては、階段やエスカレーターを利用するよりエレベーターを使うほうが便利で安全という見方もありますし、じっさい事業者の案内にも「大型荷物の人は安全のためにエレベーターへ」との誘導がされている場合もあります。

またエスカレーターで移動できるサイズの荷物を携行している人のなかには、「エスカレーターの片側を歩行する人のために空けなければならない」という因習に従うのがわずらわしいからエレベーターを利用するという人もいるようです。(この問題についてはプレジデントオンラインで何度か取り上げています。詳しく知りたい人は記事「「片側を空けるために長蛇の列に並ぶ」なんてバカらしい…「エスカレーターの右側」に1年間立ち続けた驚きの結果」を一読ください。)

つまりエレベーターというインフラは少しずつ整備されてきてはいるものの、それを利用したいと考える人が圧倒的に多いことから、本来の目的どおりに運用されずに、“早い者勝ち”でエレベーターが使用される現状があるのです。

しかも、これからの猛暑の季節には、こうした状況はたんなる「不便」ではすみません。ほんの数分間の待機であっても、暑さの影響を受けやすい高齢者や持病のある人、乳幼児にとっては、熱中症や体調悪化のリスクを高めるバリアとなりうるのです。