石油危機を乗り越えた日本車メーカーの教訓

レアアースのみならず、一部ハイテク製品に対する中国依存の問題は、以前から各国で議論されている。供給をほぼ独占する中国による輸出管理を警戒しているためだが、この議論で見逃されがちなことは、価格効果を通じた効率の改善だ。つまり品薄となり価格が高騰するほど、無駄を省くことで資源の利用効率が改善することである。

1970年代に生じた二度のオイルショックがその端的な例である。1960年代まで、国際原油価格はバレル当たり2ドル台で安定していたが、1973年の第一次オイルショックで10ドル台を突破、1979年の第二次オイルショックでは30ドル台を超える上昇となった。この原油価格の高騰を活かし体質改善を図ったのが日本企業である。

代表的な例が自動車だ。二度のオイルショックを受けて、日本車のガソリン1リットル当たりの走行距離は飛躍的に改善し、同時に日本車の国際競争力が向上したことは有名な話である。国際原油価格は1980年代中頃に急落し、いわゆる逆オイルショックが生じたが、これは需要家の効率が改善し供給が過剰となったために起きたことだ。

要するに、供給家と需要家の立場は、基本的にはイーブンだ。ただし供給家側発のショックに対して需要家側が対応するまでには時間がかかるため、その間のズレには相応の痛みが需要側に生じる。それを政府が補助金なり減税で支援するならまだしも、予め調達の多様化を義務付けるというEUの政策対応方針は市場経済の原理に反する。

米国や英国に比べると、大陸欧州の経済運営観は管理志向が強いことで知られる。その代表例がフランスだが、同国をはじめとする欧州各国が国際競争力を低下させた主因はその過剰規制志向にあると、内外から批判が寄せられて久しい。EUも規制緩和の必要性を認めるところだが、規制を強化する傾向が修正されることは望みにくい。

「メイドインEU」に固執するほど地盤沈下

そもそもEUは、中国依存の低下を産業政策の一大目標に掲げていた。いわゆる対中デリスキングだが、それは同時に、実質的なEU製品の生産と消費の奨励を意味している。つまりEUは、古典的な国内(域内)市場保護を目指しているわけだ。今年3月に発表された産業加速化法(IAA)案は、そうしたEUの志向を良く物語っている。

【図表1】EUのGDPに占める製造業の割

EUはIAAの中で、鉄鋼やアルミニウム、セメントといった基礎的な素材に加えて、風力タービンや電解装置、電気自動車(EV)といった脱炭素関連を戦略分野と定める。そしてこの分野では、モノごとに一定の域内製品の調達比率を定めようとする。また域外からの直接投資(FDI)にも、技術移転や雇用創出の義務を課そうとする。

一連の措置を通じて、EUはGDP(国内総生産)に占める製造業の割合を、現在の16%程度から、2035年までに20%に引き上げることを目標に掲げようとする。要するに“メイドインEU”を目指そうとしているわけだが、その手段も、基本的には規制強化である。とはいえ、企業活動の活発化に必要なことは、本来なら規制緩和だ。