富士山には何もない。そこには自分の心がある
江戸から時を経た平成の今、冨士講を楽しむにはどうしたらいいのでしょう。今回、初心者1人(須藤靖貴さん)を現代版・冨士講にお連れしました。電車や車を使っても構いませんから、冨士講のスピリッツを踏襲していただくことが大切だと思います。
まずは東京の高尾山を目指します。高尾山は富士山の尾根の1つと言われていて、最も高い山(富士山)の尾根だから「高尾山」というわけです。
まず高尾山薬王院で「滝修行」です。滝に打たれて心身を清めます。
世情の垢を洗い流すとともに、「ここから富士山へ向かうぞ」と、気持ちを切り替える、重要な行程です。薬王院では、指定日であれば、誰でも滝に打たれることができます。
滝の様相は日々変わります。この日の滝はとても柔らかかった。初心者を山へ歓迎するような優しさでした。ただしこの程度の水量でも、頭の天辺で受けたときには相当な水圧があります。自律神経に活が入り、全身が引き締まります。滝行がはじめての須藤さんは「水圧にはとても耐えられません」と漏らしていました。手軽に富士山の麓まで行ける現代だからこそ、高尾山に立ち寄っての厳しい滝行の意義は大きいのです。
心も身体も清めたところで富士吉田市へ。最初に「富士吉田市歴史民俗博物館」へ足を入れることをお勧めします。貴重な資料が見やすく親切に展示されていて、冨士講の詳しい歴史の流れがするすると頭に入ります。何時間見学していても飽きないほどですが、先を急ぐことにしましょう。