神保町と秋葉原の「カレー比率」は同じ
旅先では、どこにでもある大手チェーン店ではなく、その地域にしかない飲食店に立ち寄ることが私の楽しみです。地元の飲食店を見れば、その地域の特徴が見えてくるからです。
秋葉原には多くの飲食店が集まっていますが、今ほど乱立するようになったのは、あまり昔の話ではありません。神田青果市場が秋葉原にあったときは、そこで働く人たち向けの飲食店が周辺に集まっていましたが、市場が1989年に大田区に移転すると、飲食店が一気に少なくなります。1996年にビデオで発売された秋葉原を舞台としたアニメの中で、「秋葉原は」「メシ屋が少ない」という合言葉が登場するくらい、秋葉原には飲食店が不足していました。2000年以降は、観光地化と再開発が進むにつれて急激に飲食店が増え始め、今の姿になっています。
秋葉原にはいろんな種類の飲食店がありますが、多く目につくのはカレー店です。秋葉原を含む神田はカレー激戦区と言われ、カレー専門店や名物カレーを持つ飲食店が数多くあります。なぜ神田にはカレー店が多いのか。その理由として「本を読みながら、片手で食べられるから」という通説があります。しかしこれは、古書街である神保町でなら説得力があるかもしれませんが、秋葉原ではどうもしっくりきません。私は秋葉原で本といえばマニアックな同人誌を思い浮かべます。貴重な「宝物」が食事中に汚れてしまってはたいへんなので、カレーを食べながら気軽に同人誌を読む姿は想像しがたいのです。
神保町と秋葉原のカレー店を実際に歩き回って調べてみました。神保町でカレーを扱う店は82店舗。秋葉原では110店舗ありました。古書街としての神保町エリアはおよそ東京ドーム7個分あり、秋葉原は約9個分の広さなので、面積あたりの店舗数はほぼ同じ数になります。
次に、「本を読みながら、片手でカレーが食べられる」のは喫茶店だろうと思い、カレーを提供する喫茶店を探しました。神保町には11店舗あり、全体の13%になります。それに対して、秋葉原には6店舗、全体の5%しかありません。反対に店内では落ち着いて読書ができないような大手チェーンのカレー店を探してみると、神保町は14店舗で17%になるのに対して、秋葉原は38店舗で35%もあります。やはり、読書をしながらカレーを食べるには、秋葉原よりも神保町の方が適しているのでしょう。
では、なぜ秋葉原にもカレー店が集まったのでしょうか? それは、その地域とカレーという料理の特徴が関わっているように思えます。