肌にみずみずしさを与える保湿成分の働き
化粧水のおもな目的は水分の肌への補給ですから、ほとんどが水でできています。しかし、ただ水をつけただけだと、またすぐ蒸発してしまうし、先ほど述べたように、入浴や洗顔により保湿成分も失われるので、それを補うための成分も配合されています。
肌にとって保湿は非常に大事なので、実に様々な保湿成分が使われています。ここでは代表的な保湿剤であるグリセリンとヒアルロン酸についてお話しします。
●もっとも古い保湿剤――グリセリン
グリセリンは昔から皮膚の保湿に使われてきたので、もっとも古い保湿剤ともいえますが、今日でも多くの化粧品で使用されています。
その化学構造は図表4に示すように、C原子を3個、H原子を8個、そしてO原子を3個含む比較的簡単な分子です。O原子の割合の多い分子です。
O原子は水分子を水素結合で引き寄せる力が強く、グリセリンの周りには水分子がたくさん寄ってきます。図表5にグリセリンの周りに引き寄せられた水分子の様子を示します。
グリセリンが水分を引き寄せるしくみ
中央の太い線で描かれているのがグリセリン分子です。グリセリン分子の周りには分子の表面が薄い色で示されています。グリセリン分子内のヒドロキシ基(-OH)が水素結合(点線)で水分子を引き寄せています。ヒドロキシ基(-OH)は水分子を結合する上で重要な働きをします。
この図で1分子のグリセリン分子と強く水素結合した水分子は6個あります。実際に希薄溶液中では平均的に6.3個の水素結合があることが実験的に示されています。
そしてそれらの水分子はさらに外側にある水分子と水分子同士で結合することで、より多くの水分子をグリセリン分子側に引き寄せています。その様子は図表6に示します。
このように、グリセリン分子はたくさんの水分子を引き寄せ保持することができるので、皮膚を保湿することができます。天然保湿因子NMFやトレハロースなどの保湿分子もみな同様の仕方でそれらの保湿分子の周囲に水分子を呼び寄せ、保持することができます。
余談ですが、グリセリンを含んだ化粧品をつけた後の唇が甘く感じたことはないでしょうか?
これはグリセリンの甘みです。グリセリン(glycerin)の語源は「甘い」という意味のギリシア語glykysに由来します。なお、グルコース(ブドウ糖)という言葉も、同じギリシア語から来ています。



