肌を内側から支える超巨大な保湿分子
●マルチに活躍する天然保湿成分――ヒアルロン酸
ヒアルロン酸はNMFとは呼びませんが、立派な天然保湿因子であり、表皮や真皮で作られます。図表7にヒアルロン酸の化学構造の基本単位を示します。
私たちの体内で合成されるヒアルロン酸は、N-アセチル-D-グルコサミン(左側)とD-グルクロン酸(右側)という糖分子の一種がO原子で連結した単位構造(単量体:モノマー)が複数繫がって(重合して)できた高分子(ポリマー)です。
生体内のヒアルロン酸ではこの連結数(重合数)は平均で2500程度、最大ですと2万5000にも及びます。1単位の平均的差し渡しは約1nmですので、1万単位からなるヒアルロン酸分子を直線にすると、その長さは10µmにもなります。これはヒトの赤血球細胞の直径にほぼ等しい長さです。
しかし、実際にはヒアルロン酸分子は折れ曲がり、コンパクトな形で存在しているはずです。この非常に長く柔軟性のある線維は私たちの皮膚の働きを支える上でも、とても重要です。
ヒアルロン酸の保湿力は未知数
図表8に3個のモノマーからなる短いヒアルロン酸Naの構造(太線)を示します。
図の右からD-グルクロン酸→N-アセチル-D-グルコサミンと3回繰り返しています。
この図にはヒアルロン酸に引き寄せられる水分子も示しました。非常にたくさんの水分子が引き寄せられることが分かります。少し大きな丸はNa+イオンです。この場合もヒアルロン酸中の-OH基が水分子を引き寄せるのに活躍しています。
かつてヒアルロン酸はその重量の1000倍の水を保持するといわれていましたが、重合が中程度のヒアルロン酸では、それほどの量の水は溜め込まないというデータも示されています。せいぜい20~30倍という説もあります。
しかし、一方で高分子量のヒアルロン酸では逆に1000倍以上の水を溜め込むというデータもあります。
正確な数字を求めるためにはまだまだ研究が必要のようですが、仮に溜め込む水の量が1000倍以下であっても、ヒアルロン酸1分子あたりが抱きかかえる水分はかなりの量がありますので、その保湿剤としての価値が揺らぐものではありません。ただし化粧品メーカーが標榜するほどの保湿力はないのかもしれません。



