さらには海底ケーブルへの妨害やエネルギー封鎖といった、重要インフラへの圧力作戦にも利用可能だ。こうした船は軍事行動かどうかの見極めが難しく、台湾側は常に緊張を強いられると同紙は指摘する。
米タイム誌は実際、中国の軍事戦略は全面侵攻よりも封鎖を優先しているとの見方を示す。その背景にあるのが、台湾が抱える深刻な弱点だ。
エネルギーの97%、食料の70%を輸入に頼る台湾は、封鎖されればごく短期間で物資不足に陥る。中国は海警局の船舶約600隻を保有するほか、「海上民兵」と呼ばれる武装漁船約3000隻も動員できる態勢にある。これらを投入すれば、台湾を経済的に締め上げることが可能だ、と記事は指摘する。
3.5時間あれば上陸できる 米軍より高速の浮桟橋
日本も全くの無関係ではない。
台北の総統府で米タイム誌の取材に応じた台湾国家安全保障会議(NSC)の高官は、「展開状況を見ると、台湾だけを標的にしているわけではない」と警告する。「日本、台湾、フィリピンへの攻撃演習のようだ。アメリカがこの地域に介入するのを阻む訓練をしているように見える」
昨年12月の演習では、100隻を超える中国艦艇を投入して台湾を取り囲んだ。演習では海軍と沿岸警備隊の艦艇が台湾を完全に包囲し、空母「遼寧」もフィリピン近海に展開していた。
もう一つ、意外なところで警戒が必要とされるのが、「桟橋」の存在だ。中国の「自走式仮設桟橋システム」は、港湾を確保できない場合でも、ビーチから直接物資を揚陸できる。大型貨物船やフェリーがこの浮き桟橋に接岸すれば、兵員や装備、物資の荷下ろしを大幅に迅速化できる、と軍事専門家はロイターに語る。
このシステムは2020年代初頭の演習で初めて登場したが、2023年以降は姿を消していた。アメリカ海軍大学校の2025年の報告書では、技術的な問題を抱えているのではないかと推測されていた。しかしロイター通信が入手した昨年8月の衛星画像から、復活が確認された。
8月23日の演習では、組み立てから解体までわずか約3.5時間で完了。衛星画像には浜辺に車両が集まっている様子も写っており、少なくとも短時間ではあるが、実際に車両を揚陸する運用も行われたとみられる。
中国システムの即応性は圧倒的だ。比較対象として、アメリカが2024年、ガザへの支援物資輸送のために建設した仮設桟橋がある。こちらは悪天候で複数回の解体を余儀なくされ、完成まで約3週間を要した。アメリカ当局者はロイター通信に対し、理想的な条件下であれば24時間以内で運用可能だと説明したが、それでも中国の3.5時間とは比較にならない。

