アメリカのシンクタンク、外交政策研究所で中国を研究するデビン・ソーン氏によると、2017年に国防交通法が制定されたのを皮切りに、2021年以降は高度な訓練を積んだ新型の地方民兵部隊が創設された。2022年末からはNDMS事務所が各地に新設されている。
このシステムが本格的に稼働した暁には、仮に中国が武力で台湾を統一したいと決めた場合、民間と軍の資源を一括して指揮系統下に置き、中国社会全体を動員できるようになる。
軽視できない中国の造船能力 米国の200倍
中国は世界有数の造船大国だ。専門家はテレグラフ紙に、中国の造船能力はアメリカの少なくとも200倍に達するとの推計を示す。
2025年時点の軍事予算では、中国が2460億ドル(約37兆9000億円)なのに対し、アメリカは8500億ドル(約131兆円)と大きく上回る。にもかかわらず、造船分野ではこの力関係が逆転しているのだ。
艦艇の保有数でも中国が優位に立っている。現在、中国海軍は推定405隻の軍艦を保有し、295隻のアメリカ海軍をすでに上回る。2030年までにはさらに少なくとも30隻を増やす見通しだ。
中でも脅威となるのが、ローロー船の量産だ。船体に備えたランプを使えば、搭載車両が自走で乗り降りできる。米シンクタンクの外交政策研究所によれば、1隻で少なくとも車両300台と乗客約1500人を運べるといい、台湾侵攻の際には戦車や装甲車、兵員を一度に送り込む輸送の要になるとの分析がある。
2023年1月時点で、中国が運用していたローロー型フェリーは約31隻だった。しかし米戦略国際問題研究所(CSIS)は、中国本土の造船所が2023年から2026年の4年間で最大200隻を建造するとの見通しを示している。見た目は民間の貨物船でありながら、上陸作戦を支える軍事的資産。そうした船舶が年間50隻のペースで着実に増えている。
台湾周辺に出没する“漁船”の身元隠蔽工作
中国は既存の漁船も「影の海軍」として活用している。
アメリカの戦略国際問題研究所によると、中国共産党は武力行使こそ避けているものの、平和的な外交とも言えない「グレーゾーン」と呼ばれる領域で、将来の軍事作戦に向けた地ならしを進めているという。
南シナ海では、その手口が繰り返し確認されてきた。「海上民兵」と呼ばれる漁船団が係争中の岩礁に群がり、外国船の航行を妨害し、海軍艦艇を追尾する。しかし軍の記章や旗は一切掲げない。あくまで民間の漁船を装うことで、国際社会からの非難をかわしている。
こうした「グレーゾーン活動」に従事する船舶を見分けるのは、簡単ではない。
同研究所のフューチャーズ・ラボは独自の分析手法により、台湾近海を航行する約1万2000隻を分析。複数の判定基準を組み合わせた結果、関与が疑われる船舶は128隻から最大209隻に及ぶことが判明した。

