“食玩”と聞いてほとんどの人が真っ先に思い浮かべるのは、「グリコのおまけ」だろう。正式なおまけの登場は昭和に入ってからだが、すでにグリコが発売された1921(大正12)年におまけの原型といえる紙製の「絵カード」が封入されていたから、実に90年以上の歴史を有していることになる。
この「おまけ」を偏愛し、こつこつと収集をつづけてきたのが、経済アナリストの森永卓郎氏だ。ネットオークションの時代になってコレクションは急速に膨れ上がり、今や総数は1万点を超えているという。
今回、森永氏のコレクションから1400点を選りすぐり、写真つきで時代背景などとともにまとめた『グリコのおもちゃ図鑑』(プレジデント社刊)が出版された。
森永氏によれば、「グリコのおまけ」は“時代を映す鏡”だという。おもちゃの素材や造形、テーマなどから、その当時の経済や文化、世相が見えてくるということだ。実際、「おまけ」の変遷をたどっていくと、その背後にある時代のさまざまな表情が浮かび上がってくる。
大成功した「鉄人28号」キャラクター戦略
戦後の高度経済成長の波に乗って、テレビの普及率が一気に上昇したことを背景に登場したのが、一世を風靡したアニメ番組「鉄人28号」(1963年)のおまけだった。
これは、グリコの新しい「アニメ・キャラクター戦略」に基づくもので、グリコ1社で番組を提供し、おもちゃを大量生産するとともに、大規模な広告キャンペーンを展開したのである。「この戦略は絶大な効果をもたらし、子どもたちにキャラクターグッズへの強烈なあこがれを抱かせ、グリコの拡販に大いに貢献しました」(森永卓郎『グリコのおもちゃ図鑑』)。
当時の「鉄人」人気は絶大なもので、多種多様なおまけが生み出され、果てはキャラクターをあしらった「鉄人28号グリコ」が発売されるほどだった。
森永氏自身も自らを「頭のおかしい鉄人マニア」と称し、「鉄人マニアは子どものころ果たせなかった夢を半世紀後にかなえようとばかりに、オークションで苛烈な争奪戦を繰り広げています」。
実際、一部のおまけは現在でも、1点数万円という高値で取引されることもあるという。